北森 鴻 『狐罠』

イメージ 1

 「狐」シリーズ1作目を読んでみました。

狐こと宇佐見陶子は、店を持たない骨董業者旗師として若いながらも目利きである、との評判をかち

得ていた。しかし陶子をターゲットにした老舗の骨董や橘薫堂の罠に落ち、贋物のガラス器を摑まさ

れてしまう。

 屈辱に震えながら陶子は復讐を図り、店主橘に逆に罠を仕掛け返すべく行動を開始する。

 同時期に一人の女性の刺殺体がトランクから発見された。彼女は橘薫堂の従業員だった。


贋作、目利き、旗師、など骨董をめぐる独特の世界を舞台に起きた殺人事件。それに絡む人々の騙し

騙される駆け引き、警察の刑事までもが骨董に詳しい陶子を操って、捜査させようというとんでもな

い手をつかってくる。事件に巻き込まれ、傷を負った「狐」の推理は、怪しく複雑に絡み合った糸を

解きほぐすことができるのか。


民俗学那智シリーズの学識に感心しましたが、今度は骨董の怪しい世界を綿密に描き出す。北森鴻

のミステリはどれも一筋縄ではいかない異色作でした。贋作にまつわる事件、鑑定のハイテク化に対抗す

る贋作者の暗い情熱、どれも興味が尽きませんでした。TVで見る「~鑑定団」にも贋作があたりまえに

登場していましたが、この本を読むと贋作も一つの裏の芸術であると考えさせられます。

 老贋作者の制作過程は読み応えありでした。

お薦め度★★★☆