今野敏 『自覚 隠蔽捜査5.5』

イメージ 1

内容紹介
この男の行動原理が、日本を救う! 〝変人〞警察官僚の魅力が際立つ超人気シリーズ第七弾。署長・竜崎伸也はぶれない。どんな時も――誤認逮捕の危機、マスコミへの情報漏洩、部下たちの確執、検挙率アップのノルマなど、大森署で発生するあらゆる事案を一刀両断。反目する野間崎管理官、〝やさぐれ刑事〞戸高、かつて恋した畠山美奈子、そして盟友・伊丹刑事部長ら個性豊かな面々の視点で爽快無比な活躍を描く会心のスピンオフ!


隠蔽捜査5.5。
小数点付きということで、短編集です。全7編で、各短編には「隠蔽シリーズ」の名脇役たちが主人公となって出演。
彼らが捜査や判断、訓練に行き詰ったときに、頼るは竜崎署長の胸のすくような快刀乱麻のアドバイスです。

面白かったのは「訓練」

竜崎が恋してしまった女性キャリアの畠山美奈子。スカイマーシャルという航空機に乗り込む覆面捜査官の訓練を受けることになります。英語力、銃器の扱い、挌闘訓練など高度なスキルが要求されます。

厳しい訓練に初日から失敗だらけで、意気消沈した美奈子はかつて上官だった竜崎に電話をします。

竜崎のセリフはよかったですね。

「特質を活かせ」「利用できるものはなんでも利用しろ」「女性だから不利なのではない。女であることは君の特質だ」「女を武器に利用しろ」


この言葉を聞いて、美奈子はその後の訓練でとにかく頭を使って切り抜けていきます。犯人役の前でわざとつまずいたり(笑)

飛行機の犯罪ですからハイジャック、テロ。そんな凶悪な犯人を想定して、訓練は複雑に厳しくなる一方ですが、見事に美奈子はクリアしていきます。

竜崎の恋のときは、あまり好きになれないキャラでしたが、今回の美奈子はきりっとして男前でよかったです。

竜崎も、クールな助言に終始していたところを見ると、あの一件は鬼の霍乱だったのでしょう(笑)

シリーズおなじみの戸高、野間崎管理官、伊丹刑事部長など、脇役たちが直面する困難に竜崎は、署長室で判子を押しながら、見事に直球ストレートな助言を与えて、解決してしまいます。

皆、一様にぽか~んとしながらも、竜崎マジックにかかったように助言を受け入れて、実際事件を解決に導いていくのです。

今回の竜崎はアームチェア・ディテクティブっぽい立場でしたね。

相変わらず、伊丹さんにはツンデレでした(笑)

連作短編もいいけれど、早く竜崎本人の活躍が読みたくなるところです。