北森鴻 『狐闇』

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 最近、色々寄り道をしながらですが、北森鴻のシリーズを中心に読んできました。この作家のクォリテ

ィーの高さに今さらながら感心しています。(からすさん、ありがとう!)

 どの作品も読み始めると、そこに描かれる世界(骨董や民俗学)に引き込まれ知らないうちに興味深く

薀蓄に耳を傾けてしまう。そして、登場人物の魅力的なこと!那智や内藤、狐と硝子、昔からのなじみの

ように今では私の大事な友人になりました。

 狐シリーズ、2作目にあたる本書はまたも陶子が骨董をめぐる陰謀に巻き込まれるお話です。


 旗師、陶子が平塚の市で手に入れた銅鏡二枚、競り落としたときは「海獣葡萄鏡」だったのだが家

に持ち帰り開いてみると一枚が「三角縁神獣鏡」にすり替えられていた。

 不信感を抱きながらも陶子のコレクター魂はこの見事な鏡に強く惹かれていった。しかし、後にこの鏡

をめぐる陰謀に巻き込まれ、命より大事な古物取り扱いの鑑札を失う事になるとはまだ予想だにしなかっ

た。

 傷つき、失意の底に堕ちた陶子だったが、狐の矜持は負けを認めなかった。たった一人でも悪意ある謎

に立ち向かう陶子に、硝子、蓮杖那智、雅蘭堂主人越名、そして鏡の研究家滝が協力を申し出る。

 信頼できる仲間を得て陶子もまた、罠を張りめぐらせていく。 


 蓮杖那智シリーズ「凶笑面」のなかの「双死神」とリンクしています。両方読むと陶子の立場と内藤の

立場両方が見えてきて興味が尽きません。

 好きなキャラは横尾硝子ですね。陶子のカンフル剤として時に慰め、励まし、叱り付ける頼もしい友人

です。いいタイミングで登場するので思わず拍手を送りたくなるお姉さんです。


 ここで北森作品に顔を出す様々な人たちを紹介します。 
 
「暁の密使」明治の始めチベットのラッサをめざして旅立った僧侶、能海寛(のうみゆたか)の苦難に

満ちた潜入行を描く。

「花の下にて春死なむ」「蛍坂」三軒茶屋のビアバー、香菜里屋(かなりや)のマスターの推理

「孔雀狂想曲」雅蘭堂主人、越名集冶の店を舞台に繰り広げられる推理劇

「狐闇」に登場する人たちだけでも、これだけ(いや、もっとか?)あります。北森作品のもう一つの魅

力ですね。