ギュスターヴ・モロー 神話と幻想が紡ぐ夢

19世紀末、象徴主義の画家として偉大な足跡を残した孤高の人、モロー。

72年の生涯を芸術に捧げ、独自の幻想的な神話と聖書の世界を描き続けたモローの世界を、ちょっとだけご紹介いたします。


まだ中学生のころ、父の画集を寝転がって見ていたのですが、全24巻くらいのその全集で、一番心惹かれたのが「モローとルドン」という1冊でした。シュールレアリズムの荒々しさ、観る人を挑発するかのような先鋭的で知的な作品も大好きでしたが、こちらはもっとロマンチックで、耽美的な優美さがあって乙女心に強くアピールしたのです(笑)

優美なだけではなく、芯にはぞっとするほど暗い、内面の恐怖や欲望、残酷さなどをかかえこんだ両巨匠の世界に、どきどきしながら浸ったものでした。高校生になり、ぼんやりとこういう世界に進みたいなあと無謀にも美術系を志したのも、過去のこういった経験が尾を引いていたのかもしれません。

今までUPした絵の記事も、もちろん大好きな画家たちでしたが、モローの場合はなんというか、作品の一つ一つというより、全部ひっくるめて好きな画家なのです。もちろんどんな性格だったかなんて知りませんし(知りたくもない^^;)けど、彼が死後、この世界に残した作品、個人美術館を見ると、神話や聖書の世界を描き続け、追い続けた生涯が、見る人を圧倒するのです。偉大な作家や建築家など、ジャンルを超えて広く深く影響を及ぼしたことなども、モローの芸術世界の圧倒的なオーラを感じてしまいます。
「私は手に触れたものも、眼に見たものも信じない。私は眼に見えないもの、感じたものだけを信じる」
モローの有名な言葉です。

眼に見えないもの、感じたもの。
モローの描きだす凍りついたような女たち。
偏愛するギュスターヴ・モローの作品を並べてみました。



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オイディプススフィンクス (Œdipe et le Sphinx1864年
206.4×104.7cm | 油彩・画布 | メトロポリタン美術館

モローが描く男女の関係の典型でしょうか(笑)


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オルフェウスの首を運ぶトラキアの娘
(Jeune fille thrace portrait la tête d'Orphée) 1865年
154×99.5cm | 油彩・画布 | オルセー美術館(パリ)



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ガラテイア(ガラテア) (Galatée) 1880年
85.5×67cm | 油彩・板 | オルセー美術館(パリ)

ガラティアを見つめる一つ目の巨人も、物憂げな感じです。


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ケンタウロスに運ばれる死せる詩人
(Poète mort portee par un centaure) 1890年頃
33.5×24.5cm | 水彩・紙 | ギュスターヴ・モロー美術館


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サッフォーの死
1870年頃 | 油彩・画布 | 80×40cm | ギュスターヴ・モロー美術館

サッフォーの死を描いた連作も好きなシリーズです。


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パルカと死の天使
(La Parque et l'ange de la mort) 1890年頃
110×67cm | 油彩・画布 | ギュスターヴ・モロー美術館

モローらしからぬ暗く淀んだ色調。最愛の妹の死の影響でしょうか。

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ユピテルとセメレ (Jupiter et Sémélé) 1895年
213×118cm | 油彩・画布 | ギュスターヴ・モロー美術館

モロー最高にして最大の傑作。

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一角獣  1885~88年
115×90cm | 油彩・画布 | ギュスターヴ・モロー美術館

一番好きな作品です。真似したけど、とてもとても^^;

今回はあえて代表作「サロメ」の連作ははずしました。
また機会があればUPしたいな^^。