NHKドラマ 『メイド・イン・ジャパン』と日本経済の再生

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先日最終回で、無事大団円を迎えたこのドラマ。

NHKなのでご覧になった方も多いと思います。

現在低迷する日本経済、その中で残り3カ月の命を宣言された「匠電機」という大企業。ある意味戦後の経済発展を担ってきたモノづくり産業の中でも超優良企業だった匠が、なぜここまで追い詰められたのか。
ストーリーは匠の会長が、密命で「企業再生チーム」を作るところから。
主人公の矢作(唐沢寿之)はそのチームのリーダーとして、社長にも他の社員たちにも秘密で、再生の道を探る。ひと癖も二癖もあるメンバー7人が、再建戦略チームとして立ちあがった。
役者さんも皆それぞれ個性的でさすがNHKの開局60周年記念ドラマですね(笑)



ソニーパナソニック、シャープなど、世界に進出し「メイド・イン・ジャパン」の実力をささえてきた大企業が軒並み営業不振にあえいでいます。
日本の誇る物づくり、それを支える「品質管理」が、円高やら大企業病やら、中国を始めとするアジア各国の追い上げに今揺らいでいます。
不況が続くなか、リストラによる人員整理や中国などへの工場移転など、打てる手は打ち尽くした感がある企業状況ですが、まだまだ好転の兆しすら見えてきません。このドラマはそういった手詰まり感、閉そく感が色濃く描かれていて、全体に暗く、息詰まるような色調です。
また深刻になっている企業をリストラで追い出された技術者が技術が欲しい韓国や中国へ流出している「技術流出」の現状も克明に描かれ、こちらも重いテーマです。

ドラマでは、一応の結末を見て、解決へ歩き出す匠の姿、企業戦士の姿でTHE ENDとなります。


しかし、これはあくまでドラマ。
中国企業を裏切ったかたちになる技術者も実際であれば罵られて追い出されるでしょうし、最後に提携を結ぶことで生き返る匠とライシェ(中国のライバル企業)も、まず現実では手を組むことにはならない。

この脚本は2年前から井上由美子さんが温めていたもので、その間に東日本大震災があったり、アベノミクスで少し円安、株高に振れてきたり、描かれる日本企業の方も激動しています。
公式サイトでもそのへんが述べられていて面白いです。

結局このドラマ、あまりハッピーエンドではない、厳しい現実が残ったまま収束してしまうのです。確かに登場人物たちは家族愛とか、仕事への誇りとかいろいろ取り戻していくのですが、本来の主人公(日本経済、日本企業)はまだまだ置き去りにされたままです。
もちろんリアルなドラマとして、甘い口当たりの最終回では観る方も興ざめなので、ここに不満があるわけではない。よい最終回だったと思ってます。


一筋の希望の光が、アベノミクスでどう変わるのか。経済が力を取り戻し、発展によって財政出動以上の税が戻ってくるのか。インフレは計画通りになるのか。


 まだまだ課題は残されてます。今、政府は企業に利益があがったら賃上げに回すよう働きかけています。
賃上げと雇用、この二点で随分景気は上向くのですが、厳しい中を堪えてきた企業側が一番やりたくないこと(内部留保にまわしたい)なので、ここが一番難しい点でしょうね。

企業の生き残りは大事ですが、過剰な内部留保をため込んでいるところも多いようです。
社会の安定、果ては自分の経営利益につながる「雇用増と賃上げ」はぜひ英断してほしいものの一つ。
もう一つは銀行。
やはり晴れの日に傘をさし、雨が降ると取り上げる今までのやり方から踏み込んで、融資の本来の意味を考えてほしいです。土地がないと、担保がないと貸さないではなく、企業の力を見抜く目を持ってほしいですね。

私も物づくり系の仕事をしていたので、匠の技とか精密機械とか熟練工とかいう言葉に弱いのです(笑)

品質管理はやはりメイド・イン・ジャパンの信頼性を世界に高めていった土台でした。これが最近揺らいでいるのが心配ですね。やはりの日本企業の底力は、優秀な社員たちではなかったのか。

 ある工場で不良部品が多く出るので困っていたが原因がつかめない。すると女子社員が、列車が通る時間帯に不良品がでることに気づき、振動が原因とわかったそうです。そういう縁の下の力持ちのような職種にも優秀な人が厚い層を作っていたことが発展につながっていったとか・・・。(かなり昔の逸話です)


まだ日本の物づくりに期待を持ちたいのですが、どうなのでしょう。

メイド・イン・ジャパン公式サイトhttp://www.nhk.or.jp/drama/madeinjapan/index.html