マイケル・クライトン 『PREY─獲物─』

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内容(「BOOK」データベースより)
失業中のコンピュータ・プログラマーのジャック・フォアマンは、ナノテク(超微細技術)開発に携わるハイテク企業、ザイモス社に勤める妻ジュリアの様子がおかしいことに気づく。まるで別人になったかのように、性格、振る舞いが一変しているのだ。さらに、末娘に原因不明の発疹が現われたり、不審な人影が徘徊するなど不可解な出来事が相次ぐ。おりからザイモスでは、想像を絶する異常事態が起きていた。ネヴァダ州の砂漠に建設された製造プラントから、偵察用カメラとして開発された分子機械(ナノマシン)が流出し、制御不能に陥ってしまったのだ。ナノマシンには生物の“捕食者―被食者”の関係がプログラムされており、以前勤めていた会社でこのプログラムの開発にあたったジャックは、事態収拾のためにプラントへと赴く。しかし、ザイモス社独自の技術により開発されたナノマシンはウイルスのように自己増殖を始め、予想をはるかに超えるスピードで進化を遂げていた。野生化したナノマシンは、獲物を狙う捕食動物のようにスウォーム(群れ)となって人間への攻撃を開始した!暴走したマシンを破壊する手だてはあるのか?はたして人類は生き残れるのか!?テクノロジーの暴走に警鐘を鳴らし続ける巨匠が放つ未曾有のハイテク・パニック・サスペンス。全米で200万部のブロックバスターを記録し、20世紀フォックス映画化も決定した超話題作。 

クライトンナノマシンをテーマにしたSFホラーサスペンス。
ナノマシンによる人体内カメラアイを開発したジュリアのチーム。しかし、工場のミスによりナノマシンが外気に放たれてしまう。
暴走するナノマシンに対抗する手立てを見つけべく、ジュリアの夫ジャックがネバダ砂漠にあるプラントに派遣される。

ナノテクノロジーとは、極微小サイズの機械を作る技術だ。
単位は100ナノメートル─つまり1000万分の1メートル。人間の髪の毛の太さと比べても、これは僅か1000分の1という小ささでしかない。」

こんな微小サイズのマシンを作る技術というのは、今、最高にHOTな分野であるそうな。
相変わらずクライトンは見事なストーリーテリングで上下巻2冊を息もつかせず読み切らせてしまう。
20世紀FOXでの映画化決定と、誇らしげにカバーに書いてあるのもさもありなん。読み進むにつれ、各シーンが眼の前に繰り広げられるかのような、ヴィジュアル的な作品だった。

ナノマシンを制御するプログラムに昆虫の行動を模して作ったプログラムを応用するなど、クライトンのアイデアは優れている。
また、今まで人類が作り上げたテクノロジーに必ず付いてきた、光と影の部分がクローズアップされて、テクノロジー妄信への警鐘となっている。
いかにもハリウッド好みのSFホラーであるので、暴走するナノマシンは人間の知恵で、徹底的に滅ぼされるのであるが、我が諸星大二郎大先生に描かせれば、人類とナノマシンの融合となり、アンチユートピアの到来となるかもしれない(笑)

まあ、私のグダグダな妄想はともかく、発端のミスから、隠蔽、また、効率、儲け重視の企業の姿勢など、リアルでもさんざん眼にしている事件を思い出すようなリアルな部分もあった。

いつものように、とことん読者サービスに徹したクライトンであるが、きちんと警鐘は鳴らしているようだ。