元日本兵の証言

「現在を正しくするためには過去を正さなければならない」
TVのニュースで元日本兵が語った言葉です。1兵卒として中国大陸に渡り、軍上層部の命令で残留した彼らは、辛酸をなめて帰国した後、なんと脱走兵として扱われたそうです。

軍人恩給も対象外とされ、国を相手に起こした裁判も最高裁まで闘って敗訴してしまったそうです。
こんな時、最高裁の判決がいかに国よりかということを思い知ります。
たぶん、当時の証拠書類などが残っていないためにこういう判決になるのでしょう。

しかし、赤紙で召集された兵隊たちが、帰国のチャンスを蹴って勝手に戦っていた、なんてあるわけないとおもうのですが・・。
彼は自分や自分の部隊が中国で行った戦争を語る数少ない証言者です。
この方のように、今語らなければいけないという体験談をもっといろいろな立場のひとが語ってほしいと思います。

最近小泉首相が、戦後国策で移民として南米に行った人達に謝罪しました。
垣根 涼介の「ワイルド・ソウル」に詳しいですが、当時の日本政府(厚生省)の無責任で冷酷な政策が生んだ悲劇でした。

過去の国策の過ちを一つ一つ検証することがどんなにエネルギーがいるか、難しいものかを教えてくれる二つの裁判です。
南米の移民のほうは、国が控訴しないので勝訴しました。
しかし、辛酸をなめ、家族を失い、命をすり減らした人達への補償は一人200万円という金額です。

被害者が証明責任を負う個別の裁判という方法は、大規模な国家犯罪などには向かないと思うのです。

まだ語ることができる戦争体験者は、自分が知る歴史の事実を語ってほしいし、それを掬い上げる制度を政府は作らなければならないと思います。

冒頭の言葉は、私のような戦争未体験の者にも重く響きました。