島田荘司 『北の夕鶴2/3の殺人』

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あまり読んだ事のない「吉敷竹史シリーズ」ミステリ第三弾です。

実は「社会派ミステリ」という範疇に偏見をもっておりました。御手洗シリーズは、奇想、トリッキー、探偵物という大好きな分野なのですが、吉敷シリーズは、社会派、ハードボイルド、トラベルミステリという苦手分野でした。

久し振りに読んでみて「これは面白い」とおもったのは、殺人の舞台になった三ツ矢マンションの見取り図を見た時でした。
島田作品の持つ大胆で実現不可能にもみえる「大技トリック」の匂いがプンプンしてきたのです。
内容は、やはり大胆なトリックでありました(笑)

5年ぶりに別れた妻、通子から電話があった。
そのただならぬ雰囲気に吉敷は会って話したいと言ったが、通子はなにも言わずに北海道へ帰ってしまった。

その後、通子が乗っていた夕鶴号で身元不明の女性が自殺した。

特徴は通子そのものだった。吉敷は愛する元妻の安否を確かめるため、年末と年始の休暇を利用して調査に旅立った。

通子の足取りを辿って行く内に吉敷は、別の殺人事件に行き当たる。その事件では通子は容疑者とされ逃亡中だというのだ。あの電話は逃避行の中で吉敷に助けを求めていたのではないか。
吉敷は全てを投げ打ってでも、通子の無実を証明するため北の大地を傷ついた身体で走り回る。 

とにかくミステリとしては、文句なく面白かったです。限られた時間の中での緊迫した捜査を続ける吉敷をハラハラしながら見守っていました。タイトルから時刻表トリックなど想像しがちですが、まったく違いました。義経伝説、夜泣き岩の伝説、雪の中の不可能犯罪、奇想トリックの舞台は十分揃っていました。

あまりすさんのブログで紹介されていたのですが、御手洗シリーズのトリックをこちらに使ってしまったらしいですね(笑)
大変、楽しめる島田作品らしい謎、トリックでした。

しっか~し!通子って女はなんなんでしょうか。
したたかで、ずるくて、一番嫌いなタイプで、どうして吉敷刑事がここまで身体を張って守らなければならないのか、理解不能でした。いえ、作品中にそういう記述があるわけではありませんが、読み進むうちに私が勝手にそう思ってしまったわけです。

ハードボイルドの世界は、突き詰めれば女には理解できない理屈で成り立っている、と思っていましたが、通子の行動や言動がどんな気持ちから出ているのか、同じ女性なのですがさっぱり理解できませんでした。
通子の生い立ちは、この後のシリーズでおいおい明かされるそうですので、未読のわたしはあまり断定的なことは言えませんが、この一冊を読んだ限りでは全然可愛そうな女には見えませんでした。

島田先生の描く女性って、(レオナとか)つくづく自分と相性悪いんだなあと実感いたしました(笑)