(2)Mr.MHG LAST HUNT

 ?H1>第二章 ジャックと仲間たち


ミナガルデ地方は風光明媚な土地である。広大な草原に群れる草食竜や鹿に似たケルビを横目にジャック

は道を急いでいた。

「アルバニスタは確かこのへんだったとおもうのじゃが・・・。」その時前を歩く若者に気がついた。

「おおい、きみきみ・・・。ちと尋ねたいのじゃが、アルバニスタはこの道でよいのかな?」

「ええ、僕もアルバニスタにいくところなんです。ご一緒しますよ。」

若者は白い歯を見せ、にっこり笑った。

「ありがたい、友人たちと会う予定なんでな、遅れると迷惑をかけるんで・・・。」

「僕は友人たちとベテランハンターさんの話を聞きにいくところなんですよ。

 なんでもMr.MONSTER HUNTER Gと呼ばれていたジャック・ザ・グレートも来る

 らしいんで。みんな興奮してます。おじさん、ジャックって知ってますか?」

ジャックは面食らった。

「ええと・・。わしがジャックなんじゃよ・・・。」

「ええっ!!おじさんが!?・・・し、失礼しました。僕、顔は知らなかったんで・・。」

若者は赤くなったり青くなったりして弁解している。

「いやいや、もうわしらの時代はおわったんじゃ。知らなくてあたりまえじゃよ。」

ジャックもうん、と腰をのばして、また歩き始める。

「でも、感激だなあ!伝説のハンターとこうしてお話しできるなんて・・。あ、申し遅れました。

 僕の名は、リュウヤ・ミズキです。祖父はケンジ・ミズキ。ジャックさんの仲間でしたよね。」

ジャックが今度は驚く番だった。

「ケンジの孫って君だったのか・・・。」

そういえば面差しに、昔のケンジに似たところがある。

(なかなかのハンサムボーイじゃ。ケンジも昔はミナガルデ1のプレイボーイと呼ばれたモンじゃ。)

「そうか、君の発案でこの集まりが決まったんじゃな。まあ、よろしく頼むよ。」

「こちらこそ、よろしく・・。実技指導楽しみにして来たんですよ!」

二人は仲良く並んでアルバニスタの街に入って行った。

酒場のドアを開けると、懐かしい、酒と煙草、ハンターたちの狩りの匂いが鼻をついてきた。いくつも

あるテーブルを見渡すと、隅のほうに静かに座る老人の姿が見えた。

「あ、おじいさ~ん!ジャックさんを連れてきましたよ!」リュウヤが手を振って合図した。だが老人

は顔を向けもせず座ったままだった。

「おじいさん、最近耳が遠くなっちゃって・・・。」リュウヤは近づいてケンジの肩をポンと叩いた。

「ん?・・・おお、リュウヤか、大きくなったな!」やっとケンジは振り向いた。そして

「オッ!!ジャック!!ひさしぶりじゃなあ!」と言って顔をほころばせた。

二人は久々の再会に抱き合って喜んだ。ここ10年くらい会っていなかったが、こうして顔をあわせると

歳月は過ぎても友情は当時のまま変わりないことがわかった。

「そうだ、誕生日おめでとう!ようやく70代の仲間入りじゃな」ケンジは2歳年上だった。

「ああ、これでわしも老人と言われても腹を立ててはいけない年齢だよ」

「そう言えば、他の連中はまだ着かないのかね?」かつての仲間であるボンドとハルを探した。

と、その言葉が終わるまもなくバタンと勢いよくドアが開き、巨漢の老人がドスドスと登場した。

その後ろからほとんど見えなかったが、もう一人小柄な老人もやってきた。

言うまでもなくボンドとハルのデコボココンビである。

「よお!ジャック、ケンジ!ひっさしぶりじゃなあ!」とどろくような大声で挨拶するボンドは、前にも

増して、巨大になったようだ。大きな赤ら顔にヒゲをたくわえ、木の幹ほどもある筋肉隆々の腕を振り

まわしている。だが、かつては引き締まっていた腹まわりがだいぶん太めになり、特にヒゲが白くなって

いるのが年齢を現している。

「ジャック、おめでとさん!あんさんは変わらへんなあ」ハルも相変わらずの怪しい関西弁だ。

超一流のガンナーの一人として名を馳せたハルは、体格でみるとハンター最小かもしれない。160cm

あるかないかの身長、骨ばった身体で驚くべき素早さでフィールドを駆けるのだ。全身バネのようなこの

男は、針の目も射抜く抜群の技術をもっていた。だが、今のハルは、分厚い眼鏡(老眼鏡)をかけ、背中

は丸くなっていた。

「よお!ボンド、ハル!相変わらず二人でつるんでいるのかね?」ジャックも嬉しそうに手をあげてこた

えている。ケンジもそそくさと、ボンドのために頑丈な椅子を用意してやっている。

四人は、たちまち昔にもどったようにビールを飲み干し、料理を山のように注文していた。


「いやあ、俺も昔みたいには食えなくなっちまったよ」ボンドはそう言いながらアプトノスの骨付き肉

をモリモリたいらげていった。ケンジもビールを飲みながら料理に手をのばしている。

「ケンジはあんまり変わらないなあ、歳は上のくせに俺たちより若くみえるぜ」

ボンドが口の中を一杯にしたまま、大声で言った。たしかに若いときには、貴公子然としていたケンジ

は今でも端正な顔立ちにスラリとした体型を保っている。

「えっ?なんじゃ?なんかいったか?」しかし、さすがに72年も生きるとどこかは老化をまぬがれな

いのだろう。耳に手をかざしてボンドに聞き返すすがたは、やはり72歳のおじいちゃんだった。

ジャックも骨付き肉に苦戦していた。

「うむむ・・・。入れ歯じゃあ、この肉は噛み切れんわい」カウンターにいるベッキーに合図をして

「もっと柔らかい料理をもってきてくれ」と頼んでいる。

ジャックたちに会えた喜びでニコニコしていたリュウヤも、少し不安そうな様子を見せ始めた。その時

酒場の入り口が騒がしくなり、ドヤドヤと若いハンターたちが入ってきた。リュウヤを見つけると皆、

顔を輝かせて手を振っている。