(1)Mr.MHG LAST HUNT

第一章 ジャックは立ち上がった

ココット村に朝日がのぼった。おだやかな村の一日が始まろうとしている。

ここは村はずれの一軒家、ジャック・ザ・グレート(偉大なるジャック)の家である。

「あいててて・・・。今朝はとくに冷えるわい。」

腰をさすりながら、ジャックは質素なベッドの上で起き上がった。今日の誕生日で70歳を迎える。

かつては最強ハンターの名を欲しいままにしていた彼も、寄る年波には勝てず街にでることもなくなっ

ていた。生活には困っていない。若い頃に貯めた何百万ゼニーの金と、ボックス一杯の貴重な素材、

最強の武器、防具各種があった。それに、村ではみんなに尊敬され、ジャックのためにちょっとした

大工仕事や買い物を手伝いたいという人が引きも切らない状態だった。

しかし、ジャックはいつも何か物足りないものを感じていた。

「わしの人生のピークは過ぎてしまったのか。この村で毎日ケルビを狩ったりして暇をつぶしながら

やがて、死んでいくしかないのか。」

70という区切りの年齢にきて、今までの人生を振り返るのは人の常であろう。ジャックは首を振りな

がら、朝の光の中にでていった。

酒場の前にはもう村長が座って、クエストを若者たちに割り振っていた。

「やあ、ジャック、誕生日おめでとう」

「村長、もうそんなにめでたくもないさ」ジャックは苦笑いで答えた。

「お主宛の郵便や小包が来ておるぞ」村長はカードや贈り物で一杯になった袋を渡して

「なんじゃ、げんきがないのお・・・。風邪でもひいたんじゃないのか?」と言った。

「いや、わしは元気だよ。じゃあまたな」

ジャックは袋を受け取ると家の前のベンチに腰を掛け、お祝いの品を開け始めた。そこには、きれいな

カードや手編みのマフラーなど心づくしの品物がいっぱいに詰められていた。

「ん?これはなんじゃ?」

その中に、ちょっと変わった封筒を見つけさっそく開けてみる。昔、共に飛龍と戦った友人ケンジから

の手紙だった。

「ジャック お誕生日おめでとう

 お互い70を超えてしまうと街の方に行くこともなくなってくる。

 そこで、お前さんの誕生祝をダシにして昔の仲間で集まろうと思うんじゃが、どうかな?

 ミナガルデ自由区のアルバニスタという街に美味いと評判の酒場があるので、そこに集まろうでは

 ないか。

 実は孫達10代のハンターが、わしらの話を聞きたいといってきたんじゃ。

 ついでに実技指導も頼まれたんで、来る時は装備をわすれんようにな。

 では向こうで会うのを楽しみにしてるよ。」

ジャックは手紙をしまいながらつぶやいた。

「実技指導じゃと?また、武器をとってフィールドに出ろという事か・・・。」

立ち上がって家に駆け込むと、アイテムボックスのふたを開けてみる。何年もそのままになっている愛用

の装備品から狩りの匂いがつんと立ちのぼってきた。

ジャックの手が最後に飛龍と闘った、黒滅龍槍に伸びた。手のひらから黒龍の素材だけが持つジーンと

した感触が伝わってきた。

「ふん、誕生祝いじゃと?あいつらも今の隠居生活にいやけがさしておるんじゃろう。」

ジャックの背筋がピンと伸びた。盾を持ち槍を構えると、縮こまっていた筋肉に力がみなぎるのが

感じられた。

「新米ハンターの指導か・・・。いいじゃろう、わしらの実力をみせてやろう」

ジャックの中からなにかが弾けるように飛び出してきた。槍を突き出し

「HAHAHAHAHA!ジャック参上!」と叫ぶ。

その時口から入れ歯がポロリと飛び出した。

「うう、ふがふが、いかんいかん・・・」

あわててはめ直すと、防具を身にまとい、鞄に旅支度を詰め込み、再び狩りの獲物を求めてミナガルデ

へと旅立って行った。