若竹七海 『ぼくのミステリな日常』
月刊社内報の編集長に抜擢され、若竹七海の不完全燃焼ぎみなOL生活はどこへやら。慣れぬカメラ片手に創刊準備も怠りなく。そこへ「小説を載せろ」とのお達し。プロを頼む予算とてなく社内調達ままならず、大学時代の先輩に泣きついたところ、匿名作家を紹介される。かくして掲載された十二の物語が謎を呼ぶ、贅を凝らしたデビュー作。
再読です。
何年か前にこの作者をブログで知って2冊ほど記事にしたのですが、その時お仲間のほぼすべてが「ぼくミス」は読みましたか?あれは傑作ですよ!と口をそろえて絶賛されていたのです。
それから少し置いて読んだ本作、まぎれもなく傑作でした。しかも若竹さんのデビュー作というではありませんか!なのになぜか記事にはしてなかったんですよね。
先日「心の中の冷たいなにか」をパラ見していて、突然再読したくなってきた。
先日「心の中の冷たいなにか」をパラ見していて、突然再読したくなってきた。
で、遅まきながらやっと記事にしているわけですが、もうこの作品の素晴らしさ、面白さは語りつくされた感があります。
何を記事にしようかな、と思っていたらありました。それぞれの短編の最初に載っている「ルネッサンス」(広報誌の名前)の表紙。(目次も兼ねています)
ということで、今回の記事はどっちかというと既読の読者向けの、重箱の隅をつつき愉しむ的なものになってます。
ということで、今回の記事はどっちかというと既読の読者向けの、重箱の隅をつつき愉しむ的なものになってます。
4月から始まり、3月まで12の短編の最初を飾る表紙がなんともすっとボケてて面白い。
建築コンサルタントの社内報・・・若竹さんが愉しんで目次を作っているところが目に浮かびます。
創刊号の社長挨拶からはじまって、総務部長の「社内報作成の意義」、この辺はお決まりの構成ながら、大上段から語る大学教授の「東京湾プロジェクト」など、ちょっと笑ってしまう。「東京湾プロジェクト」は「学術文化研究都市」「ウォーターフロント」「アクアルネッサンス」ときて最後は「月面都市計画」と風呂敷広げすぎなのだ(笑)
肩の力を抜いた「支店訪問」で、各地方の「支店で人気のこのお店」「看板娘登場」とか。ゆる~い企画もあり。
社員に投稿してもらうホビー・フォーラム「私の趣味」なんか笑いのツボだ。
・駅売店での牛乳一気飲み
・35年にわたる仏塔の研究
・高層ビル形ケーキ(写真つき)
・第九合唱団 秋田営業所長 轟 力
なんか名前すら凝っている。
・餅つきのコツとは
・ハードロックでうさばらし 小樽営業所瀬川真理
女子かい!
最後の号では
・ミステリのたのしみ 本社営業2課T・スミス
だれ?(笑)
またこの会社、すごい討論会やってたりします。
「激動する世界情勢と日本の役割」(社内有志による特別座談会)
「激動する世界情勢と日本の役割」(社内有志による特別座談会)
もう朝まで生テレビか!ってツッコミが飛んできそう(笑)
たぶんお局様なのでしょう。小高女史の「提言・苦言・言わせてもらいます」という投稿が。
その次号に「小高女史への返信」という反論?が載り、さらに『「小高女史への返信」への返信』と女史の再反論が・・・。
さらに次号では『「小高女史への返信」への返信』へのご意見(読者より)・・・なんか社内を巻きこんで大論争になってしまったようです(笑)
まあ、内容にはまったく関係のない部分の記事で、ちょっと申し訳ないのですが^^
このように細部にこだわって構成されているので、読む際には細部に目を凝らし作者の罠にはまらないようご注意ください。
と言っても、しっかり引っかかった私です^^;
このように細部にこだわって構成されているので、読む際には細部に目を凝らし作者の罠にはまらないようご注意ください。
と言っても、しっかり引っかかった私です^^;
この作品は、短編集の形をとった長編推理という、一粒で2度美味しい連作短編です。
ひねりのきいた毎月の短編ミステリを楽しみながら最後の最後に現れる真相でびっくり。
ひねりのきいた毎月の短編ミステリを楽しみながら最後の最後に現れる真相でびっくり。
匿名の作者の正体を推理したり、他の若竹作品に出てくる登場人物を見つけたり、およそミステリを読む楽しさが詰め込まれたデビュー作です。
あまりいないかもしれませんが、未読の方は是非お薦めの作品ですよ^^