恩田陸 『月の裏側』

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内容(「BOOK」データベースより)
九州の水郷都市・箭納倉。ここで三件の失踪事件が相次いだ。消えたのはいずれも掘割に面した日本家屋に住む老女だったが、不思議なことに、じきにひょっこり戻ってきたのだ、記憶を喪失したまま。まさか宇宙人による誘拐か、新興宗教による洗脳か、それとも?事件に興味を持った元大学教授・協一郎らは“人間もどき”の存在に気づく…。 


いかにも恩田陸的な世界でした。
ほの暗く、心地よく、静かな世界。そこで起きる小さな事件。
そしてあいまいな結末。

水郷都市箭納倉にひそむ謎。失踪者たちは、何事もなくひょっこりと帰宅して、生活を続けている。

日常のなかに潜む不可思議な現象に気づいた協一郎らが調査していくのだが、ついにすっきりした結末はつけられていない。

人間もどきの存在も、失踪者のこの後もあいまいなまま投げ出されます。

本書はジャック・フィ二ィの「盗まれた街」を元に書かれた作品ですが、本家の恐ろしさより、なにか懐かしさや居心地のよさが不思議に漂う仕上がりになってます。謎の解明や事件の解決は語られることなく、終盤は人間の意識のあり方に焦点が移ってしまうという展開。
恩田陸ならではの曖昧模糊とした作品世界です。この曖昧さがダメと言う方も多いでしょうね。
私はどちらかというと、夢の中を漂うような雰囲気が気にいったのですが^^