井上夢人 『ラバー・ソウル』
洋楽専門誌にビートルズの評論を書くことだけが、社会との繋がりだった鈴木誠。女性など無縁だった男が、美しいモデルに心を奪われた。 偶然の積み重なりは、鈴木の車の助手席に、美縞絵里(みしまえり)を座らせる。 病気によって直視できないほど醜く崩れた顔を持つ男の歪んだ愛の形。
まるでサイコで変態の男が乗り移ってしまったかのような、井上さんの筆の走りが怖いです。
ストーリーは警察の取り調べと思われる関係者のインタビュー方式で進んでいきます。
殺人事件をめぐる関係者それぞれの証言。そして犯人である男の証言と、独白文が主な構成要素。
こういう形式を読んできましたが、まあ、どこかでうっちゃりというか、どんでん返しがあるはず、とすれっからしの私は身構えながら読んでいきました。
やはりありました。でも、その驚きよりも、やはり心に沁みたのがラストへ向けての種あかし部分ですね。
途中で気持ち悪くなってやめた方もいるのではないかと思うくらい、この主人公・鈴木誠は最悪な人物です。登場人物が「鈴木誠という名前すら気持ち悪い」というくらい、ストーカー体質であり、粘着タイプのサイコ野郎として描かれる。
彼の心の暗闇の深さも、読み進むうちに、気の毒な部分もあると思わせるがやはり実行していることがあまりにも最低男なので、同情も嫌悪に変わってしまう。この辺の作者の描写は真に迫っていて、井上氏の内面まで疑ってしまうくらい、迫力がありました。
そして最後に来たのは、驚きとまさかの感動?
いやいや、もう語るまい(笑)この作品は、先入観なく白紙の状態からぜひ読んでほしい。
いやいや、もう語るまい(笑)この作品は、先入観なく白紙の状態からぜひ読んでほしい。
500ページを越える長編ですが、ぐいぐい読ませるのはさすが井上さんですね。
タイトルの「ラバー・ソウル」はザ・ビートルズの名盤から。
各章のタイトルが曲名になっていて、歌詞と内容とリンクするという凝った作りも面白い。
タイトルの「ラバー・ソウル」はザ・ビートルズの名盤から。
各章のタイトルが曲名になっていて、歌詞と内容とリンクするという凝った作りも面白い。
The Wordという曲がとてもよいので、ちょっと訳詞を載せてみます。
作者はここからインスパイアされたのかな?
作者はここからインスパイアされたのかな?
The Word(愛の言葉) あの言葉を言うと自由になれる あの言葉を言って僕のようになれよ 僕の好きなあの言葉 君から聞かせて ゛愛゛の言葉を 心地いい きらめく太陽のような それは゛愛゛という言葉 初めは僕も誤解していた でも 今はいい言葉だとわかったんだ あの言葉を広めて自由になろう あの言葉を広めて僕のようになれよ 僕の好きなあの言葉を 君から聞かせて ゛愛゛の言葉を 心地いい きらめく太陽のような それは゛愛゛という言葉 どこでも耳にする言葉 いい本にも悪い本にも必ず出てくる あの言葉を言うと自由になれる あの言葉を言って僕のようになれよ 僕の好きなあの言葉 君から聞かせて ゛愛゛の言葉を 心地いい きらめく太陽のような それは゛愛゛という言葉 なんてすばらしいこの感じ あふれる光をみんなに見せたいよ あの言葉にチャンスを与えよう あの言葉で未来が開ける 僕の好きなあの言葉 君から聞かせて ゛愛゛の言葉を 心地いい きらめく太陽のような それは゛愛゛という言葉 ゛愛゛の言葉を言ってごらん
2日くらいで読了しました。
読んだ方とラストについて、語りたいな^^
読んだ方とラストについて、語りたいな^^