服部まゆみ 『この闇と光』

イメージ 1

内容(「BOOK」データベースより)
幽閉された盲目の姫君。長い髪、シルクのドレス。季節ごとの花々、優しい父王、そして姫を虐待する侍女。一度踏み込んだら抜け出せない、物語の迷宮へようこそ。魅惑的な謎と優美な幻影とが折り重なる。


ちょっと気になる存在の作家だった服部まゆみ


コメントに「ホラー好きの方には有名な本ですよね」とあったので、読んでみたくなったのです。

ようやく記念すべき1冊目。
すると、帯には皆川博子の推薦文が・・・。

「真の贅沢、真の愉楽、薔薇の香油のような」


耽美的な幻想物語を期待して読み始めました。これは確かに幻想譚であり、ミステリであり、引き裂かれた世界の物語でした。

でもね、ちょっとその舞台演出が鼻につくところもあったので、星5とまでは言えなかった。とは言えかなり高得点の作品ではありました。

盲目の姫君の物語と、悪魔的な不条理な世界が醸し出す魅惑。
闇と光という対立する概念を、皮肉にもあまりに美しい闇と平凡で醜悪な光という描き方をするところなど、共感するところでした。

読んでみてくれれば、その魅力のとりこになる人も多いと思います。
ナンノこっちゃという方も多いかもしれません。

謎が解けぬまま終わる感じもあり、本格ミステリとはまったくかけ離れていますが、この作品はやはりミステリの驚きを持っているのです。
第2章への転換では、世界をひっくり返す「皆川博子ばり」のサプライズがあります。

なんか感想が描きにくいのですが、一つの世界を構築した作品と言えるでしょう。
ちょっとサプライズが透けて見えるかもしれませんが(ミステリのすれっからしなら)その点も含めて面白い作品と言えるでしょう。