川口雅幸 『からくり夢時計』

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内容(「BOOK」データベースより)
時計店の息子・小6の聖時は、幼い頃に交通事故で母親を亡くし、今は父と年の離れた兄との3人家族。冬のある日、厳格な兄と大喧嘩をして店の作業部屋へ逃げ込んだ聖時は、そこで不思議な鍵を発見した。その鍵を古い壁掛け時計に差し込むと、突如時計の針が反時計廻りに回転!気付くと、聖時の目の前には兄の面影を残す少年が、そして夢にまで見たお母さんがいて…。タイムスリップした過去で刻まれる、かけがえのない時。やさしく心あたたまる感動ファンタジー、上巻。 

12年前の世界にタイムスリップした聖時。現代とは比較にならないほど活気に満ちた商店街を、まだやんちゃだった兄と駆け回る日々。写真でしか知らなかった祖父の昔語りに耳を傾け、夢にまで見た母親と共に囲む、あたたかな家族の食卓。お母さんの大きなお腹の中にいるのは、もうすぐ生まれてくる自分のはず。やがて運命の日、聖時の誕生日がやってきて…。ラスト、涙が止まらない!やさしく心あたたまる冬の感動ファンタジー、完結編。

うわあ、これは反則だよね~!
もう、涙がとまらん!ってか、母子ものって、どうしても自分の息子とか思い浮かべてしまうので、簡単に泣いちゃうのですが^^;

1971年生まれの作家さん。
文章を読むともっと若いのではないかと思わせる、けっこう会話文なんかはじけた感じの作品です。
↑のあらすじ通りなのですが、タイムスリップものの書きつくされた感のあるテーマで、新鮮で勢いのある筆致は、とても強力な武器になるのではないでしょうか。

着眼点も、シャッター通りになってしまった商店街が時を超えると活気に満ちた魅力的な場所になっていたり、ノスタルジーのツボを押さえてましたね。
舞台の中心が時計店という、商店街の中でも謎めいた雰囲気のあるお店にしたのも成功でしょう。

特に「お兄ちゃん」のキャラがよかった。
「鬼いちゃん」なんて主人公の聖時に(こっそりと)呼ばれている厳しいエリートのお兄ちゃん。
最初は、怖くて厳しくて、「大学もいいところしか認めないぞ」って感じの(はっきりいって)ヤナ奴でしたが、タイムスリップした時代の小6のお兄ちゃんは、とっても元気で可愛くて、やんちゃ坊主という魅力的な子どもだったのです。

生まれてすぐに事故で死んでしまったお母さんを慕いながらも絶対に会えることはないとあきらめていた聖時。ところがタイムスリップして、まだお母さんが生きている時代に迷い込んでしまう。なんとお母さんの臨月お腹のなかには自分が・・・・。

知らなかった過去の秘密や、自分の周りの人たちがどんなに優しい思いを持っていたのか。
聖時は生まれる直前の父母や祖父、そしてこわ~いお兄ちゃんの優しさに気づいていくのです。

ジュブナイルですが、大人でも楽しめる作品です。
文庫化されて本屋さんでは平積みになっていたり。
作者の手中にハマって泣いてください。泣かせる小説はあまり好きではないのですが、こういう優しさと感動の詰まった作品は、お手上げです(笑)
もう、ガードできません。防御力0でした(笑)

ただし、ラノベ風の文章がダメな方にはおすすめしません。