近藤史恵 『薔薇を拒む』

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内容(「BOOK」データベースより)
施設で育った内気な少年・博人は、進学への援助を得るため、同い年の樋野と陸の孤島にある屋敷で働き始めた。整った容姿の樋野には壮絶な過去が。博人は令嬢の小夜に恋心を抱くが、陰惨な事件で穏やかだった生活は一変する。それは悪意が渦巻く屋敷で始まる、悲劇の序章に過ぎなかった―。 

久しぶりの近藤史恵作品。かなり前に「凍える島」という孤島、密室ミステリを読み、その雰囲気作りに感心したのですが、その後なんとなく疎遠になってしまって・・・。
今回も館ものミステリで、陸の孤島のような辺鄙な湖の湖畔に建つ洋館が舞台です。

主人公の一人称視点で語られるこの作品は、博人の回想という形で始まります。彼が成人してから17歳のときの事件を振り返るという構成です。
もう起きてしまった不幸な思い出。青春の1時期を過ごした美しい洋館とそこに住む美しい令嬢とのふれあい。
もう少女漫画のような世界なのです。

博人が列車に揺られて不安な気持ちで館に向かうシーンから、ひきつけられました。
これから始まる物語に滲む不安さと、施設で育った博人の独白の哀しさ、そして少し醒めた感じの彼のキャラクターに期待が高まります。

ストーリーはちょっと不自然すぎる箇所がいろいろあるのですが、架空の物語を語る作者の「私はこういう物語を語りたい」という気持ちが入っているので、あまり気にならずに楽しく読了。

美貌の少年たちと、彼らが背負ったどうしようもなく理不尽な重い過去が明かされ始めるころにはもうこの館の虜になっていました。ちょっと栗本薫の物語に没頭するような感覚に似ているでしょうか。
陰惨な殺人事件がおき、犯人探しにも興味がいくのですが、それ以上に少年たちと令嬢小夜の行方が気になります。

なぜ彼らはここに雇われたのでしょう。

館では過去にどんな哀しい事件があったのでしょう。


あ~、面白かった。
謎とかトリックとかの意外性で読ませるのではなく、あくまでストーリーの運びがうまいなあと思わせる作品でした。
最後もよかったなあ。「薔薇を拒む」のタイトルが秀逸です。



※あくまで私の好み全開で書いた感想ですので、お好みに合わない方にはサッパリの作品かもしれません。まあ、2時間くらいで読めるので、お薦めしておきますね^^;