天祢 涼 『キョウカンカク』

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女性を殺し、焼却する猟奇犯罪が続く地方都市―。幼なじみを殺され、跡追い自殺を図った高校生・甘祢山紫郎は、“共感覚”を持つ美少女探偵・音宮美夜と出会い、ともに捜査に乗り出した。少女の特殊能力で、殺人鬼を追い詰められるのか?二人を待ち受ける“凶感覚”の世界とは?第43回メフィスト賞受賞作。 

メフィスト賞は(特に最近のものは)あまり相性がよくない。いや、相性云々より前に、どうも読もうとする意欲がなかなか起きないのだ。
これは作品というより、よりラノベ風味を増した賞の性格に、こちらの年齢が合わなくなっていったのだろうと思う。

ところで本書だが、これはいける。
内容はラノベ風味満載なのだが、文体が読みやすくて、トンデモなストーリー、トンデモなキャラが気持ちよく動いてくれるのだ。そんなに文章が上手いという作家でもないようだが、やはりまっとうな文章で(特に会話)話が進んでくれるとちょっと安心^^;


女性を殺害したあげく焼いて遺棄するサイコキラー・フレイム。
その被害者、可憐な女子高生の花恋。
花恋の復讐に燃える幼なじみの山紫郎。
そして、探偵役として共感覚の持ち主、音宮美夜。共感覚とは音に色や形が見える特殊能力のことだ。

この探偵役、絶世の美女でありながら、超のつく性格のキツサ、まともじゃないロンゲの銀髪、という漫画チックなキャラ。
事件は残酷で、探偵もまともじゃないが、なかなかキャラが魅力的。
音宮の性格も、アンモラルだけど、意外と好感がもてるところは作者の個性かもしれない。
早い時期に犯人が分かってしまうのだが、読者のナゼ?をまだまだ引っ張ってくれるところなど、楽しませてくれる。
最後にうっちゃりかまされるのも、ラノベ路線ということで許してあげよう(笑)
ラノベの荒唐無稽とミステリがいい感じに結びついた作品だと思う。
たぶんシリーズものになる雰囲気だが、「キョウカンカク」はまだまだ膨らませることが出来そうな素材だ。