深水黎一郎 『トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ』

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内容(「BOOK」データベースより)
プッチーニ作曲の歌劇『トスカ』上演中、主演女優のナイフが相手役の首筋に突き刺さった!「開かれた密室」である舞台に、罠を仕掛けた犯人の真意は!?さらに前例のない新演出の予告直後、第二の犠牲者が…。芸術フリークの瞬一郎と伯父の海埜刑事が、名作オペラゆえのリアリズムを逆手に取った完全犯罪の真相を追う。 

深水黎一郎氏、2冊目はオペラが舞台のミステリ。
薀蓄も前回のエコール・ド・パリ同様、長々と書かれているのが楽しい。オペラは学生のころに1回だけ観たというド素人ですが、この作者、なかなかの説明、紹介上手でして、未知の世界へのいい導入編になっています。
ちょっとだけ「トスカ」のDVDだけでも借りてこようかなと思ってしまった^^;
生の舞台はチケットを取る元気もお金もないもんね。


で、内容なのですが、今回も名探偵役瞬一郎の推理と薀蓄がよかったですね。海埜との関係もいい伯父と甥って感じで。また、いてもいなくてもOKとか、さんざんな評価のレギュラー大癋見警部。彼もちょっと出番は減ったものの、相変わらずの下品ジョークを飛ばして、元気でした。まあ、彼の場合不思議の国のアリスの眠りねずみ的な役どころなので、これでいいのでしょうが・・・。

ミステリとしても面白かったし、薀蓄部分の「さまよえるオランダ人」の脚本の読み替えなど、興味深かったですね。自分が唯一観たオペラがこれだったというのもありましたが、ゼンタの妄想世界っていうのは斬新です。「トスカ」の演出も、この「解釈を読み替える」という斬新な手法をうまくミステリと絡めていて、感心いたしました。

ただ、最初のほうで事情聴取する海埜が「責任を感じませんか?」と関係者に迫るシーン。え?お門違いじゃないの?と思ってしまいました。だって悪いのは犯人であって、小道具の管理や監督ではないですよね。

まあ、全体としては、とっても楽しめる薀蓄ミステリでした。
もうこのシリーズはこれで終わりなのかな?次はノンシリーズものいってみます^^