津原泰水 『ルピナス探偵団の当惑』

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内容(「BOOK」データベースより)
私立ルピナス学園高等部に通う吾魚彩子は、あるときうっかり密室の謎を解いたばかりに、刑事の姉から殺人事件の推理を強要される。なぜ殺人者は犯行後冷えたピザを食べたのか?その後も飄々たる博識の少年・祀島らと、青薔薇のある雪の館の密室殺人、死んだ大女優の右手消失事件に遭遇する。不合理な謎が論理的解明を経て、鮮烈な幕切れをもたらす本格ミステリ三編を収録。 


幻想小説の書き手と思っていたら、いつのまにかこんな楽しい本格推理作家になっていたのですね。

ルピナス学園の生徒たちが、巻き込まれる3つの事件。
本格推理の体裁で、青春小説でもあり、軽いタッチながら舞台装置は精緻な細工を施されています。
ありえないキャラ造形、主人公の彩子の姉、不二子とその上司のキャリア警察官が楽しい。
化石フェチのあこがれの同級生祀島くんも、飄々とした感じがいいですね。

第1話 冷えたピザはいかが

 この作品だけは、普通の雰囲気でしたが、被害者の意地悪さがきわだってました。
語り手の「私」にあるという「直観力による名推理の能力」と言う設定が、ちょっと消化不良だったかも。ここは祀島くんに探偵役を全面的に振ってもよかったのでは?


第2話 ようこそ雪の館へ

 スキーに出かけた不二子とルピナス探偵団の面々。雪道がふさがれ、1軒の洋館に避難させてもらう。そこは有名作詩家の雅の住まいだったが、雅は密室のなかで殺害されてしまう。
 美しい姉弟、青薔薇の咲く館、カクテル談義、そしてダイイング・メッセージ
これでもかの舞台立て、本格推理のけれんたっぷりでした。


第3話 大女優の右手 

 大女優野原鹿子が舞台の幕間に急死した。が、何ものかが死後、手首を切断しブレスレットとともに持ち去ったのだ。
こちらも、多肢症、数学論議、舞台の裏側など、本筋とは離れたところまで、丁寧につくってありました。ただ、ルピナスの面々が介入する発端がなあ・・・。


全3話の連作短編。
本格であっさりと軽い読み物として楽しめました。
2巻目も借りてきちゃいました^^v
やっぱり不二子がしゃしゃり出て、康午くんがおろおろするところが、本筋に関係なく面白かった。
あのラブレターの改ざんなんざあ、普通の神経ではできませんもの(笑)