池井戸潤 『鉄の骨』

イメージ 1

中堅ゼネコンに勤める平太は、現場勤務から「談合課」と言われる業務部に転属になる。
一本気な平太にとって談合は必要悪という理屈はなじめない。しかし、地下鉄工事の入札は社運をかけたプロジェクトである。
生き残りをかけた談合なのか。官公庁、銀行、検察の動きも絡めて、日本の不思議な文化、談合をテーマに必死の駆け引きが繰り広げられる。

今回も池井戸さんの手腕にうならされました。

談合の理屈は新聞でも読んで知っていましたが、まるで企業活動の真ん中に立って、事態の展開を眺められるような筆力には、またもや感動。
一松組の一兵卒、平太とその恋人、銀行員の萌の視点から、素人の私にもわかりやすく談合の詳しい仕組みやその深い闇の部分が明らかにされていきます。

大物フィクサーや巨悪と言われる政治家も登場して、中堅ゼネコン一松組は翻弄され、危機に直面します。

今回は主人公があくまで正義を貫こうという姿勢ではなく、談合という犯罪と、会社の論理のなかで悩んだり、妥協したりする、ある意味等身大の青年でした。その恋人の萌もまた、銀行という特殊な会社のなかで、変化していく自分にとまどう揺れ動く女性として描かれます。
社会のなかで戦う企業戦士のさまざまな形態を、リアルにきっちりと描き出す作者。
この作品も、談合というシステムの裏表を克明に見せてくれました。正義と悪だけでは割り切れない慣習、利権、既得権益。その中で歯車の一つであるサラリーマンの平太が、仲間とともに必死に仕事に取り組む姿は、何万ものサラリーマンへのエールに思えます。
三橋、尾形、など大物の人物造形もよかったけれど、先輩社員の西田くんが、なんかかっこよかったなあ。むち体型で、おちゃらけているんだけど、やる時はヤル、出来る男ってところが魅力的でした。

ノンストップの徹夜本です。お薦め^^v