F・W・クロフツ 『スターヴェルの悲劇』

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内容(「BOOK」データベースより)
スターヴェル屋敷が焼失し、主人と召使夫妻の焼死体が焼け跡から発見され、金庫の中の紙幣が大量に灰になるという事件が起こった。微かな疑問がもとで、スコットランドヤードからフレンチ警部が乗り出すことになった。だが、フレンチの懸命な捜査を嘲笑うように、事件は予想外の展開を見せるのだった。クロフツ初期の傑作として名高い作品の完訳。

先日、長年挫折を繰り返してきたクロフツの「樽」を読了。気をよくしてクロフツ第2弾、「スターヴェルの悲劇」を読んでみました。
もねさんお薦めの作品で、「樽」より読みやすいというお墨付きでした^^;

うんうん、面白かったです!
展開の意外さは「樽」より上かも。そして、ここではフレンチ警部が探偵役となり、事件を追っていくのも従来の推理ものっぽくて読みやすかった。
「樽」もとてもよかったのですが、3人くらいが事件の中心になって、次々に推理をリレーしていくのが、面白くもあり、馴染みがないぶん読みにくさにもなってましたね。

で、本編ですが、けっこう興奮しながら読みました。20年代のミステリ、さすが黄金期です!
2箇所ほど、え~~!!!と驚かされてしまいました。
はったりもケレンもないのですが、一つ一つ積み上げるようなフレンチの捜査に、つい引き込まれ読みふけってしまいます。
そしてヨークシャーの荒野地帯の荒涼とした風景が印象的でした。燃え落ちる屋敷、掘り返される墓。なかなかスリリングな部分もあるのです。
なるほどクロフツの魅力の端っこに触れられたような気がしました。

フレンチ警部、穏やかで、聡明で、人情の機微に通じています。
でも、「この事件をうまいこと解決したら、昇進も夢じゃない。上司はそろそろ歳だし・・・」
なんてことを想像したりする俗っぽいところがあるのもご愛嬌でした^^。

今でも十分面白く読める傑作でした。