アイザック・アシモフ 『鋼鉄都市』

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はるか未来の地球。
そこは、80億の人口がひしめき合う超過密都市となっていた。人々は鋼鉄のドームに閉じこもり、外界を遮断した暮らしをおくっていた。厳しい階級制と配給制にしばられた生活。
それはすでに、僅かな事故からでも人類が滅びてしまうほどのぎりぎりの環境になていた。

そこへ、大昔、地球から宇宙へ移民として旅立っていった人々の子孫(宇宙人)がやってきた。彼らは進んだ科学力を持ち、軍事力で地球の支配者となった。宇宙人は彼らだけのスペースタウンを造り、地球人とは隔絶した社会を築いていた。
ニューヨーク・シティの刑事イライジャ・ベイリは、友人でもある警視総監に命じられ、宇宙人サートン博士を殺害した犯人を捜査することとなった。現場はスペースタウンの密室。
彼は宇宙人の造った精巧な人型ロボットダニール・オリヴォーを相棒に、困難な捜査を始める。

アシモフの描く未来世界は、厳しく冷たい閉塞感に満ちた管理社会と、そこに生きる人間たちの生の可能性というものが、対比されている。
空と荒野を恐怖し、閉じられた都市以外では生きられなくなった地球人。
長寿と健康を獲得し、卓越した科学力を持ちながら、生物としての活力を失っていった宇宙人。

そして、両者を結ぶロボットという存在。

宇宙市で起きた密室殺人事件を捜査する過程で、ベイリ刑事とロボットの刑事ダニエルの間に、いつしか信頼という絆が芽生えはじめる。

地球人と宇宙人のあいだの複雑な感情、ロボットに対する庶民のいらだち。
さまざまな利害や差別意識、階級制度の矛盾を描き、未来都市の姿がリアルに描かれていく。

1級のミステリと1級のSFが融合した作品。ロボットシリーズの第1作目です。
ここから、ベイリとダニエル、そして彼の子供たちの心躍るストーリーが始まるのです。そして、このロボットシリーズもまた、「銀河帝国興亡史」まで含まれたアシモフの壮大な創造世界の1篇なのです。

この1冊、SFミステリの傑作としてお薦めの作品ですが、ここから始まるアシモフの大きなお話を網羅するのも、また手間のかかる楽しみ方ではないでしょうか