沢村 鐵 『封じられた街』

「北風のポリフォニー 」より内容紹介

謎めいた影が街を支配する……
戦慄のジュブナイル・ホラー

どこか違和感がある、居心地の悪い街。時折現れる不気味な背中の影と、ひそかに信
仰を集める「もののべ様」、次々に作られる落ち葉のオブジェ、いなくなる子どもた
ち……。事件に巻き込まれた少年と少女が、真相にせまる! ボリュームたっぷりの
ダーク・ファンタジー

「薄氷(うすらい)のディープシャドウ 」より内容紹介

子どもたちの行く手に待つものとは?
『封じられた街 北風のポリフォニー』に続く、息をのむ完結篇。

街にあがる火の手、狙われる仲間たち。
これは「もののべさま」の呪いなのか?
凍てつく寒さの中、背中の影がすぐそこに迫る。
追いつめられた子どもたちが向かった先は……。
圧倒的なスケールで描く現代ダーク・ファンタジー、ここに完結! 

なんで今までこの作者のことを知らずにきたのだろう、そんな悔しいような思いにとらわれました。
和製ダークファンタジーというと「光車よ、まわれ!」を思い出しますが、この作品はこの名作に負
けず劣らずの素晴しい出来栄えでした。

自分たちの住む町がどうにもしっくりこない少年少女たち。
なにか冷たい悪意のような、陰にかくれた不気味な存在を感じとれるのは、私たちだけなのだろうか

そんな思春期の子供たちの感性や心の動きを細やかに描き、文章もまた繊細で美しい。
登場する少年少女たちの個性的で豊かな表情が、読んでいてとても引き付けられました。
勇気と友情、そして笑いを武器に、闇の力に立ち向かっていく彼らの姿は、久し振りに胸を高鳴らせ
てくれました。
勇敢な少女おふみさん、秀平くん、ハジメくん、春奈ちゃん、そして天才なのに頼りないマモルくん
。彼らの活躍、そして成長を見守りながら不思議な物語のなかに吸い込まれるのは、昔、ナルニア
物語に浸っていたことを思い出します。
そして、忠犬ゴン!
この物語でなんともユニークなキャラクターといえば彼でしょう。もう、すっかりゴンにはやられて
しまいました。
ジュブナイルというジャンルで、大人が手をださないのは本当にもったいない。2巻にわたる彼らの
物語はボリュームもあり子供向けの本にありがちな、もの足りなさがありません。
しっかり物語りを描きこみきちんと完結している、こんな力作が10代だけに読まれるのは、おばさ
んとしても、とても不本意です。ファンタジー、ホラーが好きな大人にも、是非読んで欲しい名作だ
と思いました。

ちなみに、各章の冒頭には海外ミステリの引用が挙げられ、作者の読書の傾向もまた好ましく思った
りいたしました。