今野敏 『とせい』

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内容(「BOOK」データベースより)
日村誠司が代貨を務める阿岐本組は今時珍しく任侠道をわきまえたヤクザ。その阿岐本組長が、兄弟分の組から倒産寸前の出版社経営を引き受けることになった。舞い上がる組長に半ば呆れながら問題の梅之木書房に出向く日村。そこにはひと癖もふた癖もある編集者たちが。マル暴の刑事も絡んで、トラブルに次ぐトラブル。頭を抱える日村と梅之木書房の運命は。 


べるさんの「任侠学園」の記事に惹かれてその1作目である本書を読んでみました。

好み~~!
今野さんの「隠蔽捜査」も良かったけれど、このヤクザたちの素敵に暖かいストーリーも魅力的。

筆の勢いにグイグイ引っ張られて、1時間くらいで読了しました。坊主頭の組長さんが妙にかわいいし、主人公日村の誠実で忍耐強い(ヤクザです^^;)行動に惚れてしまいます。
これもまた「キャラもの」なんでしょうね。
パソコンオタクの若い衆徹、女にメチャもての真吉。下っ端の組員も、活き活きして読ませます。

組長の道楽で出版社に関わることとなってしまった日村。このナンバーツーが巻き込まれる怒涛のごとき出版会のリアルな日常がテンポよくユーモラスに描かれます。作家であり、極道ものを書いてきた今野さんの知識や経験がふんだんに盛り込まれ、リアルな実情、身につまされる現実が惜しげもなく晒されていきます。

「ヤクザの最大の武器は暴力ではない、情報なのだ」
「角刈りにして髪を短くするのは喧嘩のとき、摑まれないようにする用心のため」
「文壇バーというのが何軒かあってね、粋な作家は満遍なく回ったものだ」
「どんな小説がいい小説なんですか?」「私の好きな小説です」

どこを開いても名言がズラズラ並んでいる。
これ、今野さん、かなり楽しんで書いたのではないだろうか?

編集者が校了まぎわになると鬼のような表情で走り回り、さすがのヤクザもビビルあたりなど、笑いなしには読めない作品でした。
さあ、続きの「任侠学園」が楽しみだ^^;