初野晴 『1/2の騎士 ~harujion~』

イメージ 1

内容(「BOOK」データベースより)
母を亡くし、心に傷を抱える女子高生・マドカが恋に落ちた相手―それは最強の騎士『サファイア』。ふたりの出会いは、忍び寄る狂気―社会の片隅でひっそりと息づく異常犯罪者たちから大切な人、そして愛する街を守るための戦いのはじまりだった。大人への道程にいる、いまだ“不完全”な彼女たちを待ち受ける、過酷な運命とは…。透明感ある文章で紡ぎ出すファンタジックミステリー。 

自分では絶対手に取らなかった1冊。それというのも、この萌え萌えの表紙。正直借りるのが恥ずかしかった(笑)でも、べるさん、ゆきあやさんが揃って褒めていたからには読んで損はないはず。

いやあ、これは当たりですね!面白かった。

主人公マドカ、最強の騎士サファイアの造形も個性的だけどイヤミがないし、彼らを巡る人々、アーチェリー部のメンバー、親友加奈子、「ゴリラ」「サイ」「キリン」など、大人たちとの交流も読んでいて気持ちがよい。
そして、2人は街のなかで起こる不可解な事件に巻き込まれていくのですが、このミステリ要素もまた読ませるのです。
この方、まったく未知の作家でしたが、この作品で3冊目とのこと。他の本も是非手を出したいと思わせる力量でした。文章は、ちょっと変な言い回しが気になったりもしましたが、会話のみずみずしさが良かったです。
サファイアの描きかたなんか、すごく魅力的で、ファンタジーに流れずに活き活きとした存在感を持っています。ワイヤー入りのブラジャーを捨てられるところなんか、笑っちゃうくらい可愛らしいし^^;

構成は連作中篇といったところで、街で起きる事件を2人が力をあわせて解決していくのですが、それぞれ「もりのさる」とか「ラフレシア」とか「グレイマン」とか怪人みたいな犯罪者が登場します。このあたりは、昔のミステリを思わせる時代がかった雰囲気と、犯罪者のサイコぶりのミスマッチがまた、作品の雰囲気を盛り上げているような気がします。

事件を解決するマドカとサファイアの関係は、どんどん深まっていくのですが、2人ともにその過程で傷ついたり悩んだり、青春小説としても読み応えがありました。いろいろな要素を含んだ作品で、とても感想が書きにくいタイプ。とにかく読んで、と言いたい作品でした。

もろくて、儚くて、消えちゃいそうなのにずぶとくて、思春期の少女たちの揺らぐ心理を汚れちまった大人たちにも伝えてくれる物語でした。

うんうん、猫4匹越え、分かります^^;