本楽大学ミステリ学部3回課題「私が再読したミステリ」

およそミステリという種類の本は再読されることが、非常に稀なジャンルに属するものと思われます。
だってストーリーの構成が「いかにして読者を引きつけながら犯行を描きそれをアッと言わせる鮮やかな手並みで解決するか」に重きをおいているのですから。
1回読んで解決を知ってしまえばそれで満足。また読み返すことはまずありません。

ところが長いことミステリを読んでくると、とんでもない魅力的な作品に出会うことがあります。そんな作品はたとえ結末を知ってしまおうが、そんなことには関係なくまた再び登場人物たちに会いたくなってしまうのですね。

そこで、再読に耐えるミステリと私が独断で認めた作品をちょっとご紹介いたします。

もちろん作品の雰囲気、文体など、個人の好みがモロに出てますので、万人にウケルかといえば全くそんなことはありませんので(笑)そのへんはご了承いただいて、軽く読み流してくださいませ^^。


まずは聖典と言われているホームズシリーズより「シャーロック・ホームズの冒険

そして「緋色の研究」

ホームズとのお付き合いは子供のころに読んだダイジェスト版から数えれば何十年にもなるのですが、この2冊は特にお気に入りです。
ボヘミアの醜聞」「赤毛同盟」「オレンジの種5つ」「まだらの紐」など印象的な短編が並びます。
そして、ホームズシリーズの原点のような「緋色の研究」。

ここで、運命的な出会いが描かれます。

ベーカー街221Bに住む変人の研究者として紹介されるホームズ。
ワトスンはそこへ同居人として住み込むこととなるのです。
ホームズの変人ぶりが堪能できる作品です。


笠井潔「矢吹駆シリーズ」からはデビュー作の「バイバイ、エンジェル」

これもある意味キャラ読み。
パリが舞台のミステリ。なぜか現象学という小難しい学問を武器に犯罪に立ち向かう駆。
その変人ぶりがまた素敵です。
ミステリとしては「フェアだかアンフェアだか訳分かりません」でした(笑)
でも、硬派な文章、駆をめぐる人々、哲学、現象学、テロの歴史などちりばめられたミステリらしからぬ要素がとても新鮮で、今でもたまに読みたくなる傑作。

アガサ・クリスティではミス・マープルポアロを押さえて「トミーとタッペンスシリーズ」

まあ、本格ミステリではなくスパイ謀略ものの傾向が強い作品ですが、とにかく2人の若者のスマートで活気にあふれる会話が楽しいです。

時代は第1次世界大戦後という、とんでもない昔なのですが、古臭く感じないのはさすがです。

やはりこれを抜かしては語れない、ヴァン・ダイン「僧正殺人事件」

もうファイロ・ヴァンスの薀蓄だけでご飯がたべられそうな(笑)ミステリ。
でも、マザーグースの詩が恐怖や不気味さを煽って、ぐいぐい読まされるんです。もちろん薀蓄も楽しい。高等数学についての薀蓄なんてめったに聞くことありませんから。


島田荘司では「異邦の騎士」がダントツ。「斜め屋敷」「暗闇坂~」も。
でも、「奇想天を動かす」「アトポス」など再読したいミステリがいっぱいあるのが、この御大なのです。


中井英夫の「虚無への供物」は何回か読んでます。

アンチ・ミステリの代表と呼ばれるだけあって、非常に文学的な動機です^^;

そして作中に行われる推理合戦は面白い、怖い、可笑しいと3拍子そろってます^^;


これはお薦めの作品とは言えませんし、再読も通して読むのは苦痛かもしれません(笑)
でも、この濃厚で異様な洋館、黒死館の迷路をたまにさ迷いたくなるのです^^。
パラパラとページをめくるだけで、虫太郎の構築した異様な空間に誘われます。






この辺までは日頃ブログで書き散らしている内容とあまり変りがないかもしれないですね。

竹本健治の短編集「閉じ箱」から「けむりは血の色」

この短編集は初期の作品が多く収められていて、本自体も好きなのですがとくにこの少年の心象を丁寧に描いた「けむりは血の色」が好きで読み返すことが多いです。

マジョリー・ドナーの「悪夢がしのびよる」

これもねっとりとした恐怖がかなり気持ちいい作品(変態か!)
そんなにミステリとしての評価は高くありません。私の個人的な趣味でしょう(笑)

ローレンス・サンダーズの「無垢の殺人」

孤独で気弱な女性が、殺人鬼になる怖~いお話し。
この主人公の描き方がとても緻密でねちっこくていいんです。この大罪シリーズは最初の3作、すべて傑作だとおもいます。
ちなみに「魔性の殺人」「欲望の殺人」お薦めです。


やってみるとほぼ全部が古い作品になってしまいました。
ホラー、SFもやってみると同じ結果になりそうですね^^;

恩田陸もよく再読してますが、私が思うミステリというジャンルではないので割愛しました。