有栖川有栖 『幽霊刑事(デカ)』

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俺は神崎達也。職業、刑事。
美人のフィアンセを残して無念にも射殺された・・・はずが幽霊に!?犯人はなんと俺の上司。
ミステリ&ラブストーリーの傑作。

皆様もうご存知のゆきあやさんの「オールタイムベスト30」で27位に輝いたこの作品。冴さん、ゆきあやさんのお薦めで読んでみました。

実は有栖川さん、昔読んだ国名シリーズがあんまり面白くなかったということが、ずっと尾を引いていて、今に至るまで2冊くらいしか読んだことがない作家さんだったんです。
しかし、ブログのお仲間が、江神だ、火村だと楽しそうに盛り上がっているのを横目に見ながら羨ましく思っておりました^^;
短編なら入りやすいかな、と「暗い宿」にコメントしたら、こちらを薦められたというわけで・・・。


う~ん、面白かった!


とにかく幽霊になった「俺」が殺された現場の浜辺で現世に戻って来たことに気付くところから、一気に持っていかれました。
幽霊が、誰の眼にも見えない、声も聞こえない、物をつかむことどころか、婚約者に触れることすらできない。
そんな「俺」の右往左往する様子も、ユーモラスだったり、哀しさが滲んできたり。
婚約者のうなじに口づけしながら、手ごたえのない腕で抱きしめるところなど、可愛そうな幽霊に同情してしまいます。
しかし、なんと同僚だった早川刑事が実はイタコの子孫で、霊媒体質。神崎の姿が見え、声が聞こえるというなんとも嬉しい展開になってきます。この2人のやりとりときたら、まったく掛け合い漫才のようで可笑しい可笑しい。
半透明になった神埼を見て腰を抜かすほど驚いた早川も、犯人の上司を逮捕する協力者になってくれます。神崎はどこへでも侵入でき、誰にも見られない利点を活かして偵察に、早川は組織の中で内偵を担当。分担作業もなかなか成果があがらない。
と、驚くべき事件が発生する・・・。

何故上司は「俺」を銃殺したのか、という動機の謎。
その後発生した意外な事件の謎。

真犯人は誰だったのか、ミステリ部分も読ませましたが、やはり本道は幽霊になってしまった「俺」と婚約者須磨子の魂の交流でしょうね。幽霊になった俺の切なさ、そして須磨子を思う気持ちの純粋さ。

ラストは感動が押し寄せました。


ちょっと異色なミステリでしたが、バッチリ有栖川苦手意識がひっくり返されました^^。
ゆきあやさん、冴さん、ご紹介ありがとうございました。
さあ、次は江神シリーズいきます!(っていつになるのか(笑))