小路幸也 『HEARTBLUE』

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ある虹の朝、ニューヨーク市警の失踪人課の男のもとへ、一人の少年が訪ねてきて言った。「ペギーがいなくなったんだ」と。彼の捜す少女は、一年ほど前から様子がおかしかったというのだが―一方、男の知り合いであるCGデザイナーの日本人の青年も、ふとしたきっかけからある少女の行方を追い始める。二人がそれぞれ動いた末に明らかになった真実とは―想いあう気持ちがみちびいた、哀しい現実に胸が締めつけられる、小路幸也待望の書き下ろし長編。

これは今までに読んだ小路作品のなかで、最も受け付けない作品でした。

作中に登場する巡矢、サミュエル、かんななど、愛すべき登場人物たちは確かにいるのですが・・・。

やはり、中心となる犯罪が少女の性的虐待ということが、その原因のようです。はっきりとした悪人が登場しない小路氏の持ち味が、このテーマに曖昧さを与えてしまったようで。
虐待するがわ、される側の関係に、納得のいかないものが残りました。
もちろん、虐待を受ける少女の側にもいろいろな人がいて当然ですが、ここに出てくる少女の描かれかたには、不快なものが残りました。彼の長所である、なんとも爽やかな温かみのある作風が、違和感を生んでしまったのか。

とにかく、私にとってはあまり楽しい読書にはなりませんでした。

前作となる「HEARTBEAT」を読んでから、本書を読むことをお薦めします。大きなネタバレがあります。

前作は大好きな作品だっただけに、残念!