小栗虫太郎 『黒死館殺人事件 』

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黒死館殺人事件』(こくしかんさつじんじけん)は、小栗虫太郎の著した長編探偵小説である。
夢野久作の『ドグラ・マグラ』、中井英夫の『虚無への供物』とともに、日本探偵小説史上の「三大奇書」の一つとされており、また日本のオカルティズム・衒学趣味小説の代表書との位置づけがされている。(wikipediaより)



あらすじは・・・。
「カテリナ・ディ・メディチ」の血筋を受け継ぐ、日本の神聖家族、降矢木一族。
その一族が住まう豪壮なケルトルネッサンス様式の洋館・通称「黒死館」において起こる、連続殺人事件。
動く人形テレーズ、ウィチグス魔道書、栄光を発する遺体など、神秘と幻想観を帯びた事件。
それを憂鬱なイケメン名探偵、法水麟太郎が解き明かしていく。

しかしながら、ほとんどの記述は神秘思想・占星術・異端神学・宗教学・物理学・医学・薬学・紋章学・心理学・犯罪学・暗号学など広範にわたる夥しい衒学趣味(ペダントリー)で彩られ装飾的な文章で埋め尽くされた探偵小説である。

師走の声を聞いてから読み始めた「黒死館殺人事件」。
一応、ウン十年前に読んだ事はあったのですが、今回の再読であまりの忘却ぶりにあ然といたしました。(そんなんばっかり^^;)
そして、今回こそは、しっかりと読了いたしました(笑)はっきり言って、学生時代に読んださいは、作者の衒学趣味に引きずり込まれ、本筋から逸脱しまくる装飾的な薀蓄や、探偵(謎を解き明かす人)の法水の薀蓄たっぷりのおしゃべりに翻弄され、謎は深まり、本筋は見失うといった、なんとも面目ない読み方に終始していたわけです。

三大奇書のなかでも、挫折率NO.1の「黒死館~」ですが、通読のコツ、それは法水のおしゃべりに耳を貸さないこと。
これに尽きると思いました^^;

稀に見る奇書であることは確かですね。
作者、小栗虫太郎ゲーテの「ファウスト」から着想を得、モーツァルトの埋葬にも影響を受けて本書を書き上げたそうです。

大きな謎は、この物語の主人公である「黒死館」という建築物。
館主であった降矢木算哲博士は、妻、テレーズのためにこの城館を建てたものの、妻は帰国前に死亡、算哲博士自身も自殺という悲惨な運命にみまわれた。
設計士である英国人ディグスビイなる人物も、謎めいた人物で、これもやはり自殺してしまったらしい。
そして、過去40年の間に、この館では悲惨な事件が3回起きている。

不吉な館のなかには40年間1歩も外出させられず、赤子のときより育まれた、西洋人の弦楽四重奏団がいたり、亡き妻そっくりに作らせた自動人形がいたり、これでもかの舞台装置がならべられます。
そして、そこに登場するのが、法水麟太郎
この先生がいなければ、もっと物語はややこしくならずに進んでいったのでは、と思うくらいの超変人。

いろいろ高説を披露するわりには、的中率が低い(笑)
古本好きはいいけれど、殺人事件おきてますよ~、と言いたくなるような御仁でした。
この作品中、一番の謎がこの先生かもしれませんね~。
まるで、黒死館のために生まれてきたような名探偵ぶりでした。

肝心のミステリとしての評価ですが、ワタクシ的には評価不能、とさせていただきます。
なぜかといえば、これはミステリの形をとったなにか他のモノという結論を出してしまったためであります。
もちろんミステリとして読んでも素晴らしく面白い作品ですが^^。
どうも、読み終わってみると、虫太郎が深淵に向けて捧げた1篇の詩篇か、はたまた柱や梁などを一切使わずに装飾のみで建てられた神殿か。
そんな、やくたいもないことを思わせる作品でした。

一度目は、法水のおしゃべり抜きで、ストーリーを楽しみ、再読時には、その衒学趣味にどっぷりと浸りきって読むのがお勧めです。見事な作品であることは疑問の余地なしですが、万人向けとは言えません。
肌が合えば、きっとはまるはず^^;