本のタイトルリレー~ジェラルド・ダレル 『鳥とけものと親類たち』

楽家協会のご長寿イベント、「本のタイトルリレー」

ぞうの耳さんより回ってきました。ぞうの耳さんの記事はこちら
もう2周目になります。

ルールは簡単。前の人のお題、私の場合「語り女(め)たち」のなかの一語を選びそれの入ったタイトルの本の紹介をする、というものです。

「語り」「女」「たち」・・・。
さて、どの一語をとっても、楽しい本が浮かんできます^^。
まずは「はてしなき物語」「常野物語」「とりかえばや物語」「源氏物語」(←嘘です、見栄張ってみました^^;;)

「女たちよ!」「ライオンと魔女」「薔薇の女」

「鳥とけものと親類たち」。

うん、これにしましょう。「鳥とけものと親類たち」

この作品はジェラルド・ダレルが自分の少年時代を描いた世にも楽しく面白い本なのです。

10歳のジェリー(ダレル)は家族とともにイギリスからギリシャのコルフ島へ渡ります。
そこで見つけた素晴らしい自然のなかの虫や鳥、小さな動物たちとのふれあい。
コルフの人々の純朴で明るい暮らしぶり。

そんな日常を綴った作品です。
無類の面白さは、訳者である池澤夏樹ギリシャに旅立たせてしまうくらいのものでした。

なんといってもジェリーの家族が皆、変人奇人で楽しめます。
長男のラリーは、作家。変わり者で、家に様々な友人を呼び、母や兄弟に迷惑をかけます。
次男のレズリーは銃器マニア。
姉のマーゴは、にきびに悩み体重になやむお年頃。

そしてジェリー少年ときたら!
コルフの豊かな自然に育まれた動物たちにすっかり魅せられて、ひがな一日虫を観察し、ヤスデを追っかけ、蟻の行進にどこまでも付いていく。
部屋は小動物を収めたビンや水槽であふれ、ときたまその動物たちは家族を悩ませることになります。
ギリシャの田舎の純朴な人達との交流もまた、楽しい。

一家の相談役スピロ。
タクシーの運転手を営み、樽のようなからだを、よたよたと運び、力強い手と、黒いベルベットのような豊かな声を持つ男。

博識で謙虚な学者で、医者のセオドア。

この変人のメンバーを纏め上げるのが、母上。
彼女の頭の中は美味しいお料理のことでいっぱいですが、さすがにこのメンバーを育てただけあって、ラリーの友人にもレズリーの銃のことにも、ジェリーの蒐集品にも、なかなか太っ腹な寛大さを示します。

内容の素晴らしく面白いところもよいのですが、ダレルの文章の美しさもまた魅力です。

仔猫の足のようにやわらかで暖かい微風がそっと船をなでてゆく。
とか
嵐が過ぎさると、空はすっかり洗われてイワヒバリの卵の澄んだ空色になり、地面は湿ってフルーツ・ケーキかプラム・プディングのような豊潤な食欲を刺激するほどの、芳香をはなった。
とか・・・。

訳者が言ってるように、プラム・プディングのようなこのお話し、ジェリー少年の素敵に幸福な子供時代を豊かに暖かく、ユーモアたっぷりに描いています。

コルフ島の風、オリーブやテンニンカの香りがこちらにも漂ってくるような、幸せな読書になりました。

蛇足ながら、兄のラリーは、あの「アレクサンドリア四重奏」を書いた、ロレンス・ダレルです。


残念ながらただいま出版社では品切れとなってしまってます。

しかし、1作目の「虫とけものと家族たち」はまだ入手可能。
「鳥とけものと~」「風とけものと友人たち」の2作は図書館などで、手にはいると思います。

この「鳥とけものと親類たち」のみ持っておりますので、希望があれば貸し出しもいたします。

というわけで、お次の方は「鳥」「けもの(獣)」「親類」「たち」ということで、よろしくお願いいたします。
のちほどゲスブに伺います。



9月6日追記

本のタイトルリレーの歴史をアニスさんが纏めてくださいました。
以下、アニスさんのまとめに追加して、一覧を載せておきます。

【一周目】
1. ちいらばさん『小説ドラゴン桜』
2. アニスさん『ドラゴン探索号の冒険』
3. Cuttyさん『麦酒の家の冒険』
4. しろねこ『ワイン通の復讐-美酒にまつわるミステリー選集-』
5. 素朴なOLさん『復讐執行人』
6. 海山ごはんさん『特別執行機関カーダ』
7. たいりょうさん『12皿の特別料理』
8. あざらしさん『注文の多い料理店』
9. おじゃさん『最後の注文』
10.himaさん『放課後』
11.mkobさん『放浪の戦士 デルフィニア戦記1』『こちら、郵政省特別配達課!』『黒後家蜘蛛の会』(三択)
12.きいちごさん『『黒いお姫さま』ドイツの昔話』
13.まぁさん『王子さまを探す女、お姫さまを待つ男―「自分探し」の落とし穴』
14.gakiさん『女生徒』
15.めぽさん『女の一生 一部・キクの場合』
16.ちろママさん『ペンギンの憂鬱』
17.あんびるさん『名探偵の呪縛』
18.ミラさん『なぞ食探偵』
【二周目】
19.田中栞さん『本棚探偵の回想』
20.りんごさん『本棚が見たい!3』
21.大三元さん『子どもが減って何が悪いか!』
22.ちいらばさん『子どものことを子どもにきく』
23.おじゃさん『大地の子』
24.gakiさん 『天才数学者たちが挑んだ最大の難問 フェルマーの最終定理が解けるまで』
25.アニスさん 『心は孤独な数学者』
26.ゆきあやさん 『長距離走者の孤独』
27.冴さん 『キスまでの距離  ~おいしいコーヒーのいれ方 Ⅰ~』
28.beckさん 『蜘蛛女のキス』
29.ぞうの耳さん 『語り女たち』
30.しろねこ 『鳥とけものと親類たち』
31.べるさん 『鳥類学者のファンタジア』
32.月の骨さん 『アメリカの鳥たち 』
33.たいりょうさん 『ぐるぐる猿と歌う鳥』
34.mepoさん  『ねじまき鳥クロニクル』
以上です。