ヘレン・マクロイ 『暗い鏡の中に』

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裏表紙内容紹介より

女教師フォスティナは突然校長から解雇を言い渡され、愕然とした。理由は全く考え付かなかった。ただ最近彼女を見る周囲の目が、あたかも亡霊でも見たかのように恐怖と嫌悪に満ちている。
彼女自身を除く何人もが、同時刻に、異なった場所で、二人のフォスティナを目撃していたのだ。そして傷心のフォスティナがニューヨークのホテルに身を落ち着けたちょうどその時、学園では一人の女教師がフォスティナに殺されるという奇怪な事件が起こった!
ドイツに昔から伝わる分身の伝説を題材とし、大胆な殺人トリックを駆使する異色傑作。

本楽大学の企画で、こんな貴重な文庫をお借りすることができ、興奮しています。

この本との出合いは1992年に遡ります。
「100冊の徹夜本」というミステリ紹介のガイドブックですが、滅法おもしろい本がありました。
「世間であまり話題にならないのに、面白い本。読み始めれば必ず、東の空がしらじらと明けるまで読み通さずにはいられない面白本」ばかりを集め、紹介しているのです。

謎の書評家・佐藤圭。
彼の本はこれ1冊しか検索にもかかりませんが、素晴らしくユニークで的確な本読みだと思うのです。

その彼が1冊目に取り上げた作品がこの絶版になって久しい「暗い鏡の中に」というミステリでした。
ヘレン・マクロイの名前も知らなかった私ですが、この本をいつか読みたいと長年思っておりました。

中身は、ドッペルゲンガーの伝説を下敷きにした、幻想譚。ゴシックミステリとでも呼べる作品でしょう。
各章のはじめに載せられている、ヴィクトリア朝の詩人スインバーンの詩が、不気味な中にもこの作品にピタリと合った雰囲気を盛り上げています。
ミステリとして読むよりは、不思議な伝説に現実がまぎれこんでしまった幻想物語として読んでほしい作品です。

最近になってヘレン・マクロイは何冊かは復刊されて評判も(一部で)上々だったようですが(笑)またまた、復刊した文庫が在庫切れになってしまったようで・・・。

たしかにテンポのいい現代作家の作品とは1線を画しているマクロイですが、陰影のこまやかな表現や、きらめくようなイメージが魅力でした。

ゆったりと、ページをめくり、古い恐怖小説の愉しみを得たい方にお薦めです。




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もねさん、おかげで念願がかない大満足です。貴重な蔵書を提供していただき、ありがとうございました。
さて、お次はどなたが手をあげるのでしょうか?

それまで大事に保管しておきますね^^。