恩田陸 『六番目の小夜子』
内容(「BOOK」データベースより) ある高校に密かに伝わる奇妙なゲーム。「六番目の年」、それは怖ろしい結末を迎えて…。幻 のデビュー作を大幅改稿して単行本化。
今回、デビュー当時に読んだこの作品を再読してみました。
これ恩田さんが、まだOL時代に書いた作品とのことですが、驚くほど豊かな才能あふれる小
説なのです。
初めて恩田陸という作家に触れたのが本作というのは幸運なことだったと、読み返して思いま
す。その上、他の作品を(全てではありませんが)色々読んだ今、再びこの「小夜子」の世界
に触れてみて、改めて感じるところも多く、デビュー作が内包するパワーのようなものを再発
見したような気がします。
いわゆる学園ものホラー小説なるジャンルに分けられている「六番目の小夜子」。
ホラーといえばこれほど背筋を凍らせる恐怖を味わったことは稀なくらい、怖い本です。
ある高校に伝わる「サヨコ」の伝説。
3年ごとに現れる「サヨコ」。
誰にも正体を知られてはいけない、奇妙なゲーム。
しかし、ホラーのみのストーリーでは、けっしてありません。
高校という閉じられた世界のなかで、少年少女たちを巡る友情や淡い恋愛、受験、そして不可
思議な伝統、「サヨコ」の謎などが、語られていきます。
そこには、「夜のピクニック」にあったような清々しい思春期のためらいや、「麦の海~」に
見られる非現実的な学園の雰囲気、そして「チョコレートコスモス」で見せた圧倒的な演劇の
描写。
恩田作品のいろいろな部分がちらちらと姿を現しては消えていく、そんな印象を受けました。
そして、恩田作品の特徴である、すっきりしない幕切れ・・・。
この作品も、私としては曖昧な終焉を迎えることに違和感はありませんでしたが、やはりミス
テリとして読まれた方などは、最後のすっきりしない終わり方に異論があるでしょう。
いったいあの謎はなんだったのか。
「彼ら」とは何ものだったのでしょうか?
冒頭と最後の章に現れる
「彼らは空から見ると一本の細い橋につながれた島に見えた。彼らはいつもその場所にいて、
永い夢を見続けている小さな要塞であり、帝国であった。」
私は○○○ではないかと思うのですが^^;
「六番目の小夜子」の織りなす、魅惑と予感に満ちた恐怖を、こうして再読によってまた一段
と強く体験できたことは、収穫だったと思います。
恩田陸という作家、やはり只者ではありませんね。