芦原すなお 『ミミズクとオリーブ』

イメージ 1

内容(「BOOK」データベースより)
讃岐名物の「醤油豆」。焼いたカマスのすり身と味噌をこね合わせた「さつま」、黒砂糖と醤油で煮つけた豆腐と揚げの煮物。カラ付きの小海老と拍子木に切った大根の煮しめ。新ジャガと小ぶりの目板ガレイ(ぼくらの郷里ではこれをメダカと呼ぶ)の唐揚げ…次々と美味しいものを作るぼくの妻は、なんと名探偵だった!数々の難問を料理するそのお手並みを、とくとご賞味あれ。 

ああ、美味しかった。ごちそう様。

思わず、そう言ってしまうほど、この連作短編集は久々のHITでした。

芦原すなおさん、『青春デンデケデケデケ』でデビューしたときは、まったく興味が持てなかったのですが、近頃、いろいろなブログで評判がよいようなので、試しに読んでみたわけであります。
気のいい作家とその奥さんの「安楽椅子探偵」ミステリ。

ほんわりと暖かい夫婦の愛と、かわいらしいミミズクに癒されながら、日常の謎系の事件を解決していきます。
といっても、もっぱら探偵は奥様のほう。
料理上手でお針が得意、急なお客さんにも、ささっと美味しいおつまみを出してあげる、気配りのひと。そして、聡明。
なんか書いてて、自分がどんどんダメ人間に思えてきたぞ(笑)
とにかく、そんな微笑ましく、しかも普通なご夫婦が、活躍する傑作ミステリなのです。
奥さんの方は、鋭い洞察力と、女の勘で、お客が持ち込む悩み後とや事件をすらすらと解決し、旦那さんの作家は、茶々を入れたり、ぐうたらしたり、奥さんの目や足になって、代わりに現場に行ったり。

八王子の奥まったところにある一軒家に住む名探偵。
庭には1本のオリーブの木が植えられ、そこに毎日のようにやってくるミミズク。
ちょっと変わった設定です。
また、日常の謎を解くといっても、奥さんがすれっからしの名探偵じゃないところが、面白い。

箱入り娘で、世間知らず。殺人事件なんか怖くて現場にも行けない。
そんな可憐な奥さんなのに、洞察力は素晴らしい。

作家の「ぼく」の語り口がまたこの作品の魅力です。
美味しいお料理に涎をたらしそうになり、奥さんの名推理に膝を打ち、「ぼく」のぐうたらぶりに笑っているうちに芦原さんの魅力にすっかり嵌っている、そんな楽しいミステリでした。

ご紹介いただいた、ゆきあやさん、ありがとうございました。