ハインライン『夏への扉』~初心者にお薦めする名作SF作品~

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内容(「BOOK」データベースより)
ぼくらは、1970年12月、コネチカット州に住んでいた。猫のピートは、いつも冬になると、夏への扉を探す。たくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じ込んでいるのだ。そう、ぼくも夏への扉を探していた。婚約者のベルに裏切られ、仕事は取りあげられ、生命から二番目に大切な発明さえも騙しとられてしまった。そんなときだ、ぼくの目が「冷凍睡眠保険」に吸い寄せられたのは。ぼくは、猫のピートと共に、30年後に蘇る冷凍睡眠を申し込もうとする。そして、2000年の12月に…。20世紀を代表するSF作家、そしてアメリカSF界最大の巨匠としてあまりにも有名な、ロバート・A・ハインラインの最高傑作。

最近は名作ばかり読んでます。

これは再読になるのですが、情けない事に初めて読むのと同じように楽しんでしまいました^^;

感動の名作との呼び声高いハインラインの「夏への扉」。
噂にたがわぬすばらしい時間SFの傑作だった。

人生を台無しにされ、コールドスリープで30年後の2000年(!)に目覚めたダン。
相棒の猫ピートも30年前に置き去りにされ、持っていたはずの資産も会社の倒産でちり紙同然になり、一文無しで放り出される。

前半はこれでもかと不幸と裏切り、不運に見まわれる主人公だが、後半にそれがまるで、絡み合った糸がほぐれるように好転していくところが見事である。
後半のダンの活躍に、驚き、頷き、ため息をつく変な人になって、読みふけってました。

ハインラインの緻密な構成、リアルな描写が、私たちを「ハインラインの2000年」に連れていってくれる。もう7年も過去になってしまった2000年であるが、この作品の2000年は、輝かしくハインラインの筆で描かれていた。
残念ながら、風邪の撲滅も、自動家事ロボットも、ヒョイと振ると火のつくタバコも実現してないが、製図だけはCADというものが使われている。
回りを見まわしてみると、現実の2007年の味気なさが目に付いてしまった。
ハインラインの描く2000年はまだ遥かに遠い。

ダンが作った自動機械のユーモラスなことも、この作品の魅力だ。
「文化女中機(ハイヤードガール)」「窓拭きウィリー」「万能(フレキシブル)フランク」
キリキリと歯車がきしり、鋼鉄の手が忙しく働くさまが目に浮かぶような名前である。
ハインラインの※家事に対する認識には異議ありだが、ダンの発明の才能を主婦の解放に使ってくれたことには感謝である。

猫のピート(ペトロニウス)については、何も言うことはない。

猫が好きで、飼ったことのある人なら、ピートの魅力には文句のつけようがないだろう。
ピートの存在が、この作品を名作にしているのだ。

夏への扉を探す猫に乾杯!





※家事労働は同じことの繰り返しなので、一度機械にインプットすれば次からは、皿洗いでもおむつ替えでも簡単に覚えさせることができる、という認識。
そんなに簡単だったらもう、ロボットが替わりにやってくれてますよ。