『謎の宇宙海賊~その1~』 時空を越えて~第二弾~

宇宙を漂う時間旅行者、ちいらんばだと、野いちごの冒険。
調子に乗って第二弾も書いて見ました。
お暇な方は、読んでいってください^^。


球形の窓に映し出されるのは、真の闇。
その底に輝くのは赤い星。

金色のタマネギのような形の宇宙船は、時間と空間を越えた亜空間を漂っていた。
そう、ついに野いちご念願の旧石器時代に向けて航行中なのである。

窓外の景色は、星も暗闇もない不思議な光景だった。
まるでオーロラのような光が満ち溢れ、色とりどりの光の帯がどんどん迫っては背後に消えていく。
「野いちご君、最初のワープは二人とも目を閉じてしまったので知らなかったが、時間旅行というのは美しいものですねえ」
「ほんとうに、綺麗・・・」

二人はうっとりと窓の景色に見惚れていた。
と、そこへ。
丸い窓に影が差した。

「今、何か見えませんでしたか?」
野いちごが目ざとく、それを認めた。
「いや?何も見えなかったが・・・」
ちいらんばだの言葉が終わる前に、ドンドンドン!窓を叩く大きな音が聞こえたのである。
「きゃあ、な、何なの?!」
野いちごが思わず悲鳴をあげた。
「外に人がいるぞ!!」
ちいらんばだも腰を浮かし、驚きに目を見開いて固まっている。

窓の外には宇宙服をきた人物が、必死に窓を叩いている。

「こうなったら死んでしまう前になんとか船内に入れてあげなくては!」
「そ、そうですね。でも、どうやれば・・・?」
野いちごは、コントロールパネルを操作してタマネギの下部についている絞り式のエアロックを開いた。
そしてジェスチャーで下へ行けと船外の人物へ指示した。

頷いて宇宙服の人物は窓から見えなくなった。

間もなく、コンピューターの声で
『エアロックより収容完了しました』
との知らせがあり、二人ははしごを降りて下の階へと急いだ。

「まさか凶悪な人物ではないだろうな。」
エアロックに入ると、先ほどの銀色の宇宙服を着た人物は膝をついて疲れ切った様子である。
「大丈夫ですか?」
おそるおそる声をかける、ちいらんばだ。
謎の人物はのろのろと、ヘルメットに手をかけた。二人がかりでやっとヘルメットを取ってやると、いきなりフワッと薔薇の香りが立ち込めた。
出てきたのは、目鼻立ちのくっきりした若い男。白いタキシードの襟元には紫の薔薇のコサージュがしおれている。
「ああ、ありがとうございます。九死に一生を得ました・・・。
私の名前は、まぁまぁ。日本に最初に来たパンダ、です。」
「ああ!あのKatty's Cafeのメンバーですか?」
野いちごもちいらんばだも驚きを隠せない。
「いえ、それは私の先祖で、私は23世紀の人間です。」
「ええ!23世紀!」
二人はハモッて叫んでしまった。

「はい、23世紀には時間旅行は普通の交通手段となっています。
僕は、月のMoon the born基地で、連詩会と川柳大会とマラソンを同時にやるトライアスロン競技のために亜空間を通過中に宇宙海賊に捕まってしまったのです。
でも、こうしてお話しする暇はないのです!早くこの亜空間から逃げ出さなくては!」
まぁまぁの緊迫した様子は二人にも伝わった。
「とにかく亜空間を漂流するなんて無茶なことをするには、大変な訳があるのでしょう。こちらへ上がって、どういうことか話してください。」
ちいらんばだは、男をコックピットへ誘った。

3人がシートに身体を落ち着けて、いよいよまぁまぁの話を聞こうとしたその瞬間だった。

ブブ~~~~!『エマージェンシー!エマージェンシー!』
聞きなれてしまったコンピューターの警告が音声とオレンジの点滅する照明でけたたましく響きわたった。

『敵機らしき物体を確認。本艦よりの距離5000、衝突まであと3分。』
『これより戦闘モードに移ります。図書カードを挿入してください。』

慌てて、図書カードをお手玉しながらスリットに差し込むちいらんばだ。
タマネギは金色の機体を震わせると、ウィーンという音を発しながらテッペンのとがったところから下に向けて皮を剥くように外壁を開いていった。するとそこには、バズーカ砲も撃てそうな砲身が突き出してきた。

「なんだ?こんな機能が付いているのか!」
相変わらず、充分に取り説を読んでいないちいらんばだである。
「会長、私が操作しますから、そこのシートに座っててください。」
野いちごが取り説片手に操縦席に座り、すばやくページを繰り始めた。

「あったわ。戦闘モード」
「どうだ?操縦できそうかな?」
ちいらんばだも不安そうだ。
突然野いちごは、シートの下にある収納ボックスを引っ掻き回して、何かを取り出した。
「あ、それはコントローラー、しかもワイヤレス!」
まぁまぁの顔が嬉しそうにほころんだ。サッと野いちごからそれを取り上げると、
「ほう、PS3の3次元対応、ワイヤレスだな。よし、こい!宇宙海賊どもめ!!」
といきなりの戦闘モード。

「ちょ、ちょっと、大丈夫なの?だいたい宇宙海賊って?!」
慌てる野いちごの言葉を待っていたかのように、大きな艦内モニターに怪しい黒い影が浮かび上がっていた。

「僕はあの宇宙海賊ドナルドに捕まっていたんです。やっとのことで宇宙服を奪って逃げ出しました。
しかし、あのドナルドは簡単に諦めるような奴ではありません。
二人とも覚悟はいいですか?
僕はこのコントローラーには多少、腕に覚えがありますから、任せてください。
絶対、ドナルドに一泡ふかしてみせますよ。」

まぁまぁが話している間にもその怪しい影は、亜空間のオーロラの中から姿を鮮明に現し続けている。
黒い船体、そしてその中ほどから高くたなびいているのは大漁旗
「なんだ、あの大漁旗は?!」
「あれが、奴のシンボルなんです。あの旗を見たらどんな強力に武装した商船でも一目散に逃げ出してしまうんですよ。」
と、そのとき、タマネギの無線機がガーガー音をたてた。
「♂!諸君!無駄な抵抗をやめて有り金と金目の物を全部ひきわたせ。命だけは助けてやる。
あと、まぁまぁとやら言う男。
お前が盗んだ宇宙服は1,899,800円もしたんだぞ。ちゃんと請求してやるからな!!」
大きなはっきりとした男の声だ。
が、言ってる事はけっこう細かい。

「ふざけるな!貴様にやるような金なんか1円たりとも持ってない!」
まぁまぁも無線で怒鳴りかえした。

「あ、ちょ、ちょっと待って。そんなにはっきり敵対しなくても・・・。」
ちいらんばだは、おろおろしている。しかし、
「会長、まぁまぁさんの言うとおりですよ。戦わずして海賊に白旗をあげるなんて、それこそ何されるか分かったものじゃあありませんよ。」
野いちごも目をきらきらさせて、海賊ドナルドの方を見つめている。
「でも相手はあんなに大きい宇宙船だよ。こんなタマネギなんか一飲みにされそうじゃないか。」
だんだん接近してくるドナルドの船は、まさに巨大な戦艦だった。

「もう一度言うぞ。さっさと降参してお宝をよこすんだ。3つ数えたらお前達のタマネギなんか亜空間に漂う塵になってしまうんだぞ!」
再び無線からドナルドの声が聞こえてきた。

「よおし!それならこちらから先制攻撃させてもらうぜ。」
まぁまぁの指が神業のようにコントローラーを操って、○ボタンを連打しまくった。
同時に砲身からはビームが海賊船めがけて雨あられと降り注いだ。
植物性油で動いているにしては、派手な攻撃だった。
しかし、
「ふはははは!そんなビームでは毛ほどの傷もつけられないぞ。」
ドナルドがあざ笑っている。
「さあ、時間切れだ。今度はこちらから行くぞ!」
海賊船の主砲がこちらを向き、灼熱に砲身が赤く輝いてきた。
「な、なにが来るんだ?」
ちいらんばだの声が裏返っている。

光の束が放射された。間一髪、まぁまぁの操縦でタマネギは直撃を避けられた。
「だめだ、この亜空間から早く抜け出すんだ。」
まぁまぁが叫び、機体が激しく振動した。
「抜け出すって、どうやって?!」
野いちごの指が素早くページをめくり続ける。
「あった!時間旅行キャンセル!」
操作すると同時にタマネギは、暗い宇宙空間に飛び出していた。


作品中の個人、団体名は全てフィクションです。(多分(笑))
その2で完結です。