アスカ・フリーダム 『アスカと白猫』

虐待され傷だらけになって捨てられていた白猫。
3歳の心優しいアスカに助けられ、一人と一匹は、親友のように仲良く育っていった。
アスカは1歳の時に母を亡くし、外国航路の船員をしている父と二人暮しだった。
三ヶ月も海の上にいる父を待つアスカ、その寂しさを受け止めるアイルーと名づけられた白猫。

アイルーは命を助けられた優しいアスカにいつか、恩返しをしたいと思っていた。
しかし、中学生になったアスカに「父、洋上で連絡を絶つ」との知らせが届いた。
ただ一人の肉親をも奪われてしまうのか、嵐の中を航行していた船は沈没いてしまったのだろうか。
アイルーはアスカに恩返しをすることができるのだろうか。

夜話でお馴染みの女馬券師アスカさんが、しろねこ日記1周年記念に書いてくれた夜話3部作です。
アスカさんの素敵なプレゼントに感激しました。本当にありがとう!
そこで、偉そうですがリクエストにお答えして、この作品の書評を書かせていただきます。

白猫アイルーの一人称で語られるこの作品は、私のお願いしたキーワード「猫」「鏡」「時間」を取り入れて創作していただいたものです。お題から作者アスカさんがどのような料理をしてくれるのかとても楽しみにしていました。
結果は期待より数倍上の感動的な作品に仕上げていただきました。

なにより語り手の白猫アイルーの言葉がクールで、投げやりにも思える出だし部分から、だんだん愛情に触れて優しい気持ちを語るようになるところが、好きですね。
しかも老猫になってからもクールさと、矜持を失わない猫のセリフはこの作品の魅力です。
言葉の隅々を見れば瑕疵はあるのでしょうが(すみません、プロじゃないので、言葉については語りません)小説として一番大事な読ませるパワーを感じました。
今までの作品はSF、ホラーといった要素が多かったのですが、「アスカと白猫」はハートウォーミングなファンタジーとしてアスカさんの新しい境地を開いたと思います。
ホラー作品もすっごく怖いのがありましたね。「学校の鏡」とか。
でも、こういうちょっと不思議な世界の暖かい触れ合いを書いたこのお話しのようなものも、読むほうの好みを問わない点で支持されると思います。
不覚にも涙が出てしまったこの作品。
是非、このブログに来た方に読んで欲しい短編小説です。

「アスカと白猫」の書庫をどうぞ、ご覧ください。

蛇足ですが、動物虐待の問題も提起されています。