良寛~純粋なとらわれない心~

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この記事を書くきっかけは、昨日行った居酒屋「笑笑」の壁にありました。
そこには良寛さんの歌と子供と手まりに興じる良寛さんの姿が描かれていたのです。

手毬をよめる

冬ごもり 春さりくれば 飯(いひ)乞ふと 草のいほりを
立ち出でて 里にい行(ゆ)けば たまほこの 道のちまたに
子どもらが 今を春べと 手まりつく 一(ひ)二(ふ)三(み)四(よ)五(い)六(む)七(な)
汝(な)がつけば 我(あ)はうたひ あがつけば なはうたひ
つきてうたひて 霞立つ 長き春日(はるひ)を 暮らしつる


かえしうた
霞立つ長き春日を子供らと手まりつきつつ今日もくらしつ

ビールを飲みながらぼんやりと眺めていて、なんとも心地よい気分になりました。
今日になってネットなどで調べてみると、その無邪気でとらわれることのない自由な歌風に心を惹かれました。

良寛さん研究のHPによると、

日がな一日を「かくれんぼ」や
    「毬つき」などで子供達と遊ぶ良寛
宗門の戒めに背き、酒をのみ煙草もすいながら
         多数の詩歌を詠んだ良寛
印可の偈(免許状)を受けながら、
   生涯一寺の住職にもならなかった良寛
僧侶でありながら経を読まず
          説教もしなかった良寛

という、自由で無邪気な人柄が浮かび上がります。

子供に「字を書いて」と乞われて「何にするのか」と尋ねると、子供は「凧にする」と答えました。すると良寛天上大風とのびやかに書いてあげたといいます。

画像の書が広い空に高く舞っている様がほほえましいですね。

70歳の時には30歳の尼さんと交流を始め、師弟関係とも恋愛ともつかない、これまた自由なおつきあいをしていました。貞心尼というこの女性とは74歳で亡くなる最後まで細やかな歌のやりとりや、互いを尋ねあう関係でした。
死の床でもこの人と弟子に看取られました。

これぞこの ほとけの道に 遊びつつ つくやつきせぬ みのりなるらむ
* 良寛さんは手鞠をついて遊んでいると聞きますが、そこに尽きせぬ仏への精進の道
が、私には窺われます。私も一緒に遊び、仏道を学びたいと存じます

この一首から始まった貞心尼の歌。

これに返した良寛の歌はこうです。

つきて見よ ひふみよいむな やここのとを とをとおさめて またはじまるを
(「つきて見よ 一二三四五六七八九十を 十とおさめて また始まるを」)
* この手鞠をついて、無心になる気持を求めるならば、理屈や言葉ではなくて、あな
たもどうぞ一緒に手鞠をついてごらんなさい。一二三と十までついたら、また繰り返して
、ひたすらついていく。夢中になっている時に、実は本当の仏の世界が開けてくるんで
すよ。

一夜を語り明かし、貞心尼が帰るとき
立ちかへり 又もとひこむ 玉鉾の 道のしば草 たどりたどりに
* またお伺いしてもよろしいでしょうか
又もこよ しばの庵を いとはずば すすき尾花の 露をわけわけ
* こんな、むさくるしいところでも、かまわなければ是非また来て下さい。

こんなやりとりがあり、二人はこの後良寛が死ぬまで歌を通じて深い交流を続けました。
良寛と貞心尼の相聞歌はこちらのHPで詳しく載ってます。
僧籍にいる二人ですが、こんな濃密な歌のやりとり、とても艶っぽい関係に思えてきます。

うらを見せ おもてを見せて 散るもみぢ
最後のころに貞心尼によせた俳句。* 自分のいいところも、わるいところも、かざらずすべて見せてきたから思い残すことはない。人間死ぬるときは、うそもまこともなく、自然に還って散って行くものだ。という心情を良寛作ではありませんが、この句に託したのでしょう。



良寛は優れた芸術家(短歌、書、漢詩)でしたが仏の道も独特の解釈で究めた方でした。
次の歌には仏の恵みを月の光になぞらえて、彼のおおらかで自由な仏教の教えが息づいているようです。

ひさかたの 月の光の きよければ 照らしぬきけり
唐(から)も大和も 昔も今も うそもまことも やみも光も

月の光があまりにも尊く美しいので、どこまでもその光がおよんで、隠れるものは何もない。中国も日本も、昔も今も、嘘も誠も、暗い部分も明るい部分も、全て月の光(仏の力)がおよんでいる。

自由で平等な仏教の教えを、短い言葉のなかで端的にしかも美しく表現しています。
確かにお経を読むよりありがたいと思ってしまう良寛様のお歌ですね。

良寛漢詩にもたけていました。
今日見つけたばかりの素敵な漢詩をご紹介します。

    花無心招蝶    花 無心にして蝶を招き
  蝶無心尋花    蝶 無心にして花を尋ぬ
  花開時蝶来    花 開く時、蝶来り
  蝶来時花開    蝶 来る時、花開く
  吾亦不知人    吾れも亦人を知らず
  人亦不知吾    人も亦吾れを知らず
  不知従帝則    知らずして帝の則に従う 

人も草木も動物も同じように愛した良寛のやさしく無心なまなざしが感じられました。

まだまだ心に残る歌がいろいろありました。
またの機会にご紹介できたらいいなと思っております。