奥田英朗 『ガール』

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痛快OL小説と呼びたくなる短編集でした。

そして、なによりも驚いたのは奥田英朗氏が、まるで女性であるかのようにOLたちの心理を鮮やかにリアルに描いていること。
OLや仕事を少しでもやったことのある女なら、そうそう、そうなんだよね~と大きく頷くようなエピソードが5つ収められています。

30代で課長になった聖子。3期上の部下が典型的なマッチョの会社人間。男社会の中で、派閥だの子飼いだの、理不尽なルールに反発しながら、家では夫が自分より給料が安くて平社員であることを気にしている。(ヒロくん)

友人の独身女性がマンションを買った。30代、OLのゆかりは、結婚の予定もない自分の将来を考えて購入に傾いていく。しかし、いつ辞めてもいいと思って勤めていた会社。マンションはそんな気楽なゆかりの立場を微妙に変化させていく。(マンション)

広告代理店勤務の由紀子は、バブリーな青春時代を楽しんで過ごしてきた。きらびやかな夜のクラブや、ディスコで花形として過ごした日も、30代の声を聞くととたんに周囲の扱いが変ってしまう。いつまでもガールでいたい30代。女の子でいたい女性達の元気でフクザツなアフターファイブ。(ガール)

シングルマザーの孝子は小1の息子をホームヘルパーの手を借りながら育てている。営業部のハードな残業も子供のことをださないで、こなしてきた。健気にがまんする息子に胸を痛め、手柄を横取りしそうな販売部のやり手OLと戦い、男社会で堂々と勝負してきた。しかし、ある日「その日は子供の授業参観があるので」と切り札を切ってしまう。(ワーキング・マザー)

新人社員の指導を命じられた容子、さわやか、イケメンの慎太郎クンにほのかな思いを抱いてしまう。しかし、彼は一回りも年下。(ひと回り)

どこにでもいそうで、けっこう皆ハンサムな女達でした。いろんなしがらみに板ばさみになったり、矛盾を感じながらも、会社の論理で押し切られたり。現実のOLたちはこんな思いきった行動はできないだろうけど、それだけにスカッとする読後感があるのかもしれません。

30過ぎた女性にたいする、ちゃんとした社会の椅子がない現状。
独身なら・・・・、シングルマザーなら・・・・、そして亭主より出世すると・・・・。
・・・・には、思いつく差別用語を入れてください(笑)

この作品を男性が書いたという事実が、昔よりは良くなりつつあるのだと思いたいですね。