奥田英朗 『町長選挙』

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奥田英朗の「伊良部医師シリーズ第3弾」です。

端的に言うと「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」ほどのインパクトはありませんでした。

その原因が4話のうち3話までが、読めば誰とすぐわかるような、実在の話題の人物をモデルにしているところでしょうか。(ナベツネホリエモンetc)

奥田氏の作品の面白さに、登場人物が坂を転げ落ちるように、人生を誤って転落してゆくというものがあります。

伊良部シリーズも患者達がとんでもないトラブルを抱え転げ落ちるように災難のなかにはまり込んでいく。そして、こころならずもトンデモ精神科医の伊良部を頼り、いやいや治療を受けるうちに・・・。というのがお約束の展開ですが。今回の「町長選挙」では、実在のキャラクターへの遠慮が枷になったのか、転落ぶりや、伊良部医師の変人ぶりが甘かったのでは、と思わせるところがありました。

その点、4話目の「町長選挙」は、奥田氏の筆が縦横に走り、小さな島の選挙をめぐるドタバタに、変人伊良部がからんでハチャメチャなな面白さが楽しめました。
公共事業の奪い合い、権力と金が絡んで醜い選挙運動が展開しますが、さすが奥田氏、正義感に流れることなく島の住民のエゴもずるさもひっくるんで、伊良部のいいかげんなキャラクターも団子にして大団円に疾走して行きます。

昔の筒井康隆を思わせる箇所もちらほら。
伊良部ファンなら必読。そうでなければ「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」を先に読むことをお薦めします。

但し、この2冊を読んだ方は、多分伊良部ファンになるでしょう。

ということで、猫3.8匹(爆)