上田敏訳 『落葉』 『山のあなた』

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 落葉
   ポオル・"ヱルレエヌ

 秋の日の
 ヴィオロンの 
 ためいきの
 身にしみて
 ひたぶるに
 うら悲し。
 
 鐘のおとに
 胸ふたぎ
 色かへて
 涙ぐむ
 過ぎし日の
 おもひでや。
 
 げにわれは
 うらぶれて
 こゝかしこ
 さだめなく
 とぴ散らふ
 落葉かな。

   
 山のあなた
  カアル・ブッセ

 
 山のあなたの空遠く
 「幸」住むと人のいふ。
 噫、われひとと尋(と)めゆきて、
 涙さしぐみ、かへりきぬ。
 山のあなたになほ遠く
 「幸」住むと人のいふ。

詩、それも象徴詩の翻訳という難事業に取り組んだ偉人ではないでしょうか。

あまり知られていないかもしれませんが、このような訳詩も残しています。

 わすれなぐさ  
  ヰルヘルム・アレント

  ながれのきしの ひともとは
  みそらのいろの みづあさぎ
  なみ、ことごとく くちづけし
  はた、ことごとく わすれゆく

岸辺に咲いたひともとのわすれなぐさ。波が洗い、流れさっていきます。


追記
「落葉」のフランス語の原詩を載せました。
私には謎の原語ですが、読める方は↑の訳と合わせて読み比べてみるのも面白いかと・・・。


Chanson d'automne
                Paul Verlaine

Les sanglots longs
Des violons
 De l'automne
Blessent mon coeur
D'une langueur
 Monotone.

Tout suffocant
Et blême, quand
 Sonne l'heure,
Je me souviens
Des jours anciens
 Et je pleure

Et je m'en vais
Au vent mauvais
 Qui m'emporte
Deçà, delà,
Pareil à la
 Feuille morte.