中原中也 『サーカス』

サーカス

幾時代かがありまして
  茶色い戦争ありました

幾時代かがありまして
  冬は疾風吹きました

幾時代かがありまして
  今夜此処での一(ひ)と殷盛(さか)り
    今夜此処での一と殷盛り

サーカス小屋は高い梁
  そこに一つのブランコだ
見えるともないブランコだ

頭倒(さか)さに手を垂れて
  汚れ木綿の屋蓋(やね)のもと
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

それの近くの白い灯が
  安値(やす)いリボンと息を吐き

観客様はみな鰯
  咽喉(のんど)がなります牡蛎殻と
ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

     屋外(やがい)は真ツ闇(くら) 闇(くら)の闇(くら)
     夜は劫々と更けまする
     落下傘(らくかがさ)奴(め)のノスタルヂアと
     ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん

                                                        

ゆあーん ゆよーんが印象に残る詩です。
30歳で夭折した少年のような中也。

まだ読み始めたばかりの中也です。皆様のお気に入り、よろしかったらTB、コメントで教えてください。