木宮条太郎 『時は静かに戦慄く』

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内容(「BOOK」データベースより)
児童相談所の所長・山野は、増え続ける児童虐待の報告に頭を抱えていた。その増え方は、明らかに異常だ。児童虐待で始まった違和感は、刑事事件へと発展し、京都の町は瞬く間に無差別殺人によるパニックに陥った。だが、無差別に見えた殺人には、実はある一つの「法則」が隠れていた―。人類進化の最終形態を、戦慄すべきヴィジョンで提示した、恐るべき予言の書。第6回ホラーサスペンス大賞特別賞受賞作。 


じわじわと嫌な事件が起こり始めるのに、その原因もわからないもどかしさ。

なにかが水面下で蠢いているような不気味さ、虐待の増加件数の謎。

ゆっくりと破滅の足音が近づく中盤までと、一気に京都がパニックに陥る中盤以降のスピード感ある展開の対比が読ませます。

ちょっと主人公の女の子にイラっと来る場面もあったけれど、そのもどかしさまで作者の計算の内とも言えるのでしょう。登場人物も魅力的で、日常の姿がリアルに描き分けられているだけに、後半恐怖が加速していきます。そのへんの筆力は評価できるのでは・・・。

終盤に解き明かされる「ある法則」は、かなりSF的な感じで悪くない詰めでした。

あまり、ラストが爽やかなのがちょっと違和感を持ちましたが、エンターテイメントとして考えればこれが正解の終わり方なのでしょう。

なかなか舞台である京都の描き方もうまく、緊迫感ある市街の混乱から京都御所の避難所、同志社大のキャンパスなど迫力ある描写で作品にリアリティを与えていました。

ホラー・パニック・SFのテイストが絡み合って、とても楽しめる娯楽作品になっていたと思います。

新人ということなので、次回作かなり期待してしまいますね!