谷川俊太郎 『死んだ男の残したものは』

死んだ男の残したものは
ひとりの妻とひとりの子ども
他には何も残さなかった
墓石ひとつ残さなかった

死んだ女の残したものは
しおれた花とひとりの子ども
他には何も残さなかった
着もの一枚残さなかった

死んだ子どもの残したものは
ねじれた脚と乾いた涙
他には何も残さなかった
思い出ひとつ残さなかった

死んだ兵士の残したものは
こわれた銃とゆがんだ地球
他には何も残せなかった
平和ひとつ残せなかった

死んだかれらの残したものは
生きてるわたし生きてるあなた
他には誰も残っていない
他には誰も残っていない

死んだ歴史の残したものは
輝く今日とまた来る明日
他には何も残っていない
他には何も残っていない


                「死んだ男の残したものは」 谷川俊太郎作詞・武満徹作曲 


もねさんのお薦めの詩です。
世代的には反戦歌としてご存知のかたも多いと思います。

私は谷川俊太郎というと、マザーグースや童話の翻訳という知識しかなかったので、この詩を読んでかなり驚きました。
しかし、反戦のメッセージながら、今でも心を揺さぶる力を持っている作品です。


http://www.geocities.co.jp/MusicHall/6654/sindaotoko.htm ここでメロディも聴いてみてください。