高村光太郎『ぼろぼろな駝鳥』

何が面白くて駝鳥を飼ふのだ。
動物園の四坪半のぬかるみの中では、
脚が大股過ぎるぢゃないか。
顎があんまり長過ぎるぢゃないか。
雪の降る国にこれでは羽がぼろぼろ過ぎるぢゃないか。
腹がへるから堅パンも食ふだらうが、
駝鳥の眼は遠くばかりみてゐるぢゃないか。
身も世もない様に燃えてゐるぢゃないか。
瑠璃色の風が今にも吹いて来るのを待ちかまへてゐるぢゃないか。
あの小さな素朴な頭が無辺大の夢で逆まいてゐるぢゃないか。
これはもう駝鳥ぢゃないぢゃないか。
人間よ、
もう止せ、こんな事は。
                        (引用:高村光太郎高村光太郎詩集」岩波文庫



mepochzoさんのブログより頂いてきた光太郎の詩です。

動物園の駝鳥と、自分の姿が重なることも。

これはもう駝鳥ぢゃないぢゃないか

この最後の叫び
詩の力を強く感じた作品です。