恩田陸 『エンドゲーム -常野物語-』

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本書は常野物語シリーズ、「光の帝国」の短編「オセロゲーム」の続編にあたります。

常野一族でも異質な能力を持つ、拝島家。「やつら」を見つけ「裏返す」能力を持っている。

しかし、十年以上前に父は失踪、どうやら「やつら」に「裏返された」らしい。

人ごみに混じる異質な存在を見る能力、そして「裏返す」か「裏返される」かの息詰まる戦いを続けなければならない宿命。

母、瑛子、娘、時子はそんな緊張に満ちた生活を送りながらも、一族から離れ隠れるように生きてきた。

そんな彼らの前に「洗濯屋」を名乗る黒ずくめの男、火浦が現れたとき、仮初めの平和は崩れ、おぞましい迷宮のような世界が彼らを飲み込んでいく。

常野一族の「裏返す」能力の意味は?
洗濯屋に「包まれた」「洗われた」人の心はどうなるのか?

瑛子と時子の親子に、暗い恐怖が忍び寄る。 


常野物語として読むと、なにか違和感のようなものがあります。「オセロゲーム」自体が異色な短編だったと思うのですが、解決編にあたる本書は、さらに違和感が強まったような印象です。

読みながら「メイズ」を彷彿とするシーンあり、心理的なホラー(とでも言えばよいのか)の味わいが濃い作品でした。
かなり暗く無機的な印象を受けた小説です。

自分がどういう人間なのか、意外とその寄って立つ基盤が弱いことを読んでいて考えてしまいました。
記憶、家族、友人や職場。
実は億弱でたよりない記憶に頼っているのでは・・・と、眩暈に似た怖さを味わってしまいました。

何層にも複雑に話が重なり合い、一読しても「あれ、どういうこと?」と戸惑うような小説世界でした。

読解の能力もあるのでしょうが、もう一度読み直してから記事を書いた私です。