伊坂幸太郎 『砂漠』
伊坂幸太郎氏の「砂漠」は、読んでいて戸惑った作品でした。
的な味わいもどこかに残している、そんな印象を受けました。
伊坂幸太郎がミステリ作家だとは、さらさら思わないのですが、こういう風にさらっと学生青春ものを書
かれてしまうと肩透かしを食らったような気持ちになってしまうのです。
仙台の国立大学に通う北村が、体験した様々な事件や交友を季節に分けて綴っている形式をとっているの
ですが、語り手の北村のクールさ、突きはなしたような無関心さがちょっと鼻についた感があります。
友人の鳥井、西嶋、東堂、南と遊ぶマージャンのシーンなど、わざわざ牌の絵まで文中に入れて解説する
必要があったのか、その辺も疑問に感じるところでした。
ただ、伊坂作品ではなくほかの作家の作品として読めば、かなり面白くレベルの高い内容だと思います。
要は、私のなかのにある伊坂幸太郎のイメージが、これは違うよ!と言っているだけなのでしょう。
「陽気なギャング」から始めて、「オーデュポンの祈り」「重力ピエロ」「死神の精度」などと主な作品
はけっこう読んできましたが、作者自身が新しい脱皮をとげたのに気付かない読者なのかもしれません
ね。
この作品にリンクする「魔王」未読のため、なんとも言えない点があります。
ただ、この作品に限って言えば不満とまではいきませんが、なにか伊坂らしくない匂いが行間から感じと
れたような気がしました。
「砂漠」の喩えも、案山子や死神など面食らうほど訳のわからない素材を見事に料理して見せた手腕を知
っていると、あまりにもありきたりではないのかなあ、と。
まあこの路線が今後の伊坂作品の主流になるとすれば、もうあまり読まなくてもいいかもと思ってしま
う
なあんてことは、まるでない!
ふふふ、上の文章はこのフレーズを言いたかったために書いたわけではまるでないですよ^^;