有川 浩 『海の底』

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ノンストップ・トンデモ・SFパニック・ミリタリー小説でした。


ダン・ブラウンがぐいぐい読ませると思いましたがこの作品はその5倍のスピードで読んでしまいました。分厚いハードカバーなのに、おもしろー!とか言いながら引き込まれて読了。

登場人物がとっても魅力的な作品でした。

桜祭りで米軍横須賀基地は賑わっていた。そこへ襲い掛かってきたのはなんと巨大なメートルサイズのザリガニの大群だった。港の中は海水が赤く染まるほどの大群が押し寄せ、陸上にもおびただしい数のザリガニが襲撃してきた。

1~3メートルほどもある凶暴なザリガニたちは人間に襲い掛かり餌にしていた。逃げ惑う人々の中に、取り残された子供たち十数人がいた。

港に停泊中の潜水艦【きりしお】の乗務員、夏木と冬原。若い二人の自衛官は命がけで彼らを救助するが、退路を断たれて【きりしお】艦内に逃げ込む。そのとき艦長は子供たちをかばって命を落としてしまう。

陸上では、神奈川県警の明石警部がいち早く事態を掌握し、独断で機動隊の出動をもとめていた。 


物語は二つのパートに分かれて進行します。潜水艦に閉じ込められ、ザリガニに囲まれた子供達と夏木ら自衛隊員の避難生活。もう一方は、地上でザリガニを市街地に出さないように奮闘する、警察。なわばり争いが絶えない自衛隊と機動隊。ことなかれ主義で有効な手段を選べない政府などの人間たちの戦い。

軍事オタクやザリガニ博士など、脇役たちもしっかり描かれてページをめくるのももどかしい面白さでラストまで突っ走ります。

とにかく巨大ザリガニに日本が蹂躙されるトンデモシチュエーションが、いかにもありそうなリアルな展開で読ませます。

作者は女性です。子供たちのリーダーの高校生の女の子の描き方など、納得できますがその他の部分は、女性らしくないダイナミックで骨太なストーリーでした。

夏木や冬原が見せる男の魅力がとてもよかったですね。この作品だけの登場で終わるのが惜しいキャラクターで、是非続編を書いて欲しいものです。

塩の街」「空の中」と既刊が2作あります。どちらも、トンデモ本らしいです。