北森 鴻『触身仏』蓮杖那智フィールドワークⅡ

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那智、お前の一生は俺が面倒見てやる。黙ってついてこんかい。



いきなりの内藤君のせりふですが、もちろん心の叫びです。蓮杖那智シリーズ第二巻の「触身仏」のテー

マは封印ではないでしょうか。冒頭の内藤の言葉ももちろん封印されていますし。


秘供養


 東北の雪深い山中をフィールドワークしていた那智と内藤。天明の飢饉のさいに作られた五百羅漢を捜

ている最中に那智は崖から転落して骨折、2ヶ月の療養を余儀なくさせられる。大学内では那智の講義を

受講していた女学生が謎の死をとげる。

 那智不在の研究室で一人困り果てる内藤に意外な救いの手が・・・。教務の予算担当者、狐目である。

この作品で狐目は敵役から協力者へと大変身!意外性のあるいい役どころを演じています。 


大黒闇


 神々の変貌をテーマに、天照、スサノオ大国主命の変貌を歴史の闇に埋もれた民族,伝承に光りをあ

てて解き明かす。そして、大学内部に棲みついたカルト宗教サークル「アースライフ」の陰謀を看破す

る。


死満瓊(しのみつるたま)


 謎のメールを残して那智が失踪!残された内藤と狐目の活躍が光る。那智が内藤にディープキス?意外

な事件の解決を見る。この作品では天皇家に伝わる三種の神器についての考察が面白い。


触身仏


 即身仏が祭られたその目的とは?山人、製鉄民族の隠された歴史の闇を解き明かし、欲望に駆られた現

代人の犯罪もついでに(?)暴いてしまう。 


御蔭講


 御蔭講伝説とわらしべ長者伝説についての論文を作成中の内藤。そこへ、新しい助手佐江由美子が現れ

る。学会の論文をめぐる生臭い話をからめて、那智の研究室はまたもトラブルの予感が・・・。


 今回の事件の舞台は大学や学会が多くフィールドワークでの事件は「触身仏」のみ。それでなのか、狐

目の活躍が目立ったシリーズでしたね。彼のキャラクターも中々よいので、三作目「写楽・考」でも登場

を期待してしまいます。

 本書は本格推理とは趣きが異なり、犯人あてよりも民俗学の謎の解明の方に重きを置いた異色のミステ

リーといえるでしょう。門外漢ですが、作者の民俗学の造詣の深さに益々感心します。


お薦め度★★★★