門田隆将 『裁判官が日本を滅ぼす』

イメージ 1

面白い本、肩の凝らない本ばかりを紹介する予定でした。この本はすらすら読めてすごく面白いのですが

めちゃめちゃ重い内容でした。実際にあった事件を取材し、その事件が司法の場でどのように扱われ、

裁かれていくのかをレポートしたものですが一読して背筋が寒くなるような恐ろしさを味わいました。

 私達が安心して暮らしていけるのは、犯罪やトラブルから警察や司法が守ってくれるからだと思って

ました。でも本書を読んで、ただ運が良かっただけじゃなかったのか、実際に犯罪にあっていたら守って

はくれなかったんじゃないか、と言う疑問、疑念がむらむらと湧いてきたのです。


 以下目次より

第一章 小野悦男を解き放った無罪病裁判長の責任

第二章 「痴漢はあったのか、なかったのか」同じ証拠で逆の結論

第三章 犯人が消えてなくなった仰天判決

第四章 裁判上の真実は「本当の真実」とは無関係

第五章 医師も絶句する「医療裁判」の呆れた実態

第六章 元検事も激怒した金融裁判のデタラメ

第七章 無期懲役の殺人犯がなぜまた無期懲役なのか

第八章 遺族を怒鳴り上げる傲慢裁判長

第九章 法廷で不正を奨励するエリート裁判官

第十章 少年法の守護神となったコンピューター裁判官



作者の門田隆将は一つ一つの事例を平易な文章で描きながら、被害者や原告が司法の冷たい壁に遮られ

非常識な判決を下される様を告発しています。

 また、痴漢の裁判で書かれているように冤罪で被告になった男性が刑事訴訟では無罪を勝ち取れたのに

民事では敗訴してしまうなど、判決の矛盾や裁判官の事実認定の甘さに言及しています。


 私が特に感じたのは少年犯罪における少年法の弊害と、裁判官の非常識ぶりでした。真実、正義、公平

といった裁判官が寄って立つ理念はどこへやら、予見や偏見、判例重視の判決がぞろぞろ出てきます。

 作者はこうした裁判官を形成する元凶として、司法修習生の教育を挙げています。憲法はまったく

教えずに法律の細かい事例を徹底的に教え、法律の技術屋を育成していく、その中でも特に成績がよく

従順な修習生が裁判官になっていく。法衣をまとう以前に裁判官の質はあるていど篩いにかけられて

いたのです。


法律で復讐や仇討ちを禁じられている私達の社会で司法制度が機能しないということは、普通の生活を

おくれないことです。ただ運よくトラブルから遠ざかっているにすぎない、それが今私達が置かれている

状況なのだと思わざるを得ません。

 中嶋博行著「罪と罰、だが償いはどこに?」を合わせて読むと日本の警察、司法の現状がさらに暗澹

としたものであることが解かります。
 
 こんな状況を改める一つの改革が、今議論されている裁判員制度です。一般の国民が裁判に参加して

裁判官と合議しながら有罪無罪の評決をする。最高裁は大反対しているようですが、エリート意識に

固まった彼らからみればとんでもないふざけた改革なのでしょう。しかし、法廷の独裁者として絶対的

権威をもつ裁判官を常識、真実、正義に引き戻すにはこれくらいしか有効な手段はないように思えます。

負担を負っても、私達がまっとうな司法を求めたいなら自分たちの手でそれを取り戻さなくてはならない

のでしょう。


以上ゴマメの歯軋りでした