「今にして思えば」-土曜日は灰色の馬ーより

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感想はあとで記事に書くとして・・・・今読書中の恩田陸「土曜日は灰色の馬」に出てくることで、ちょっと思い出した出来ごとがあります。

「うろおぼえの恐怖」という章で「怖いというのは、どういうことを言うのだろう」と恩田さん自身が問いかけています。色々考察しながら、やはり「気づき」があったときが、怖いときだという。
「今にして思えば」とか「誰かに聞いた話なんだけど」と始まる話が「怖い」のだ。

特に「今にして思えば」は当時は目にしていても何とも思わなかった。あるいは、渦中にいて理解できなかった。しかし、今ならば視点や視座が変わり何が起きていたのか分かる。・・・

その気づき以前と以後の落差が大きいほど「怖い」のだというのです。


そこで思い出したのがつい1週間ほど前の電車のなかの出来ごとです。

夜遅く、新宿へ行く列車に乗っていた私は、「停止信号のため、しばらく停車いたします」というアナウンスにうんざりしました。出入り口の上の電光掲示板には、人身事故で遅れる路線、信号機の故障で遅れている路線が次々と表示され、この電車もまた、人身事故の影響を受けているらしい。

車内は5割くらいの乗客がいて、座席は空きが目立ってました。
前の席には年配のご夫婦と、その息子らしき30代くらいの男性が座っていました。
停車してしばらくして、年配の男性が苦虫を噛み潰したような顔で、やおら立ち上がると手に持っていた小さな紙袋を奥さんに渡すと、つと席をたってスタスタと隣の車両めざして歩いていってしまいました。
駅と駅の間で停車中なので、トイレにでも行ったのだろう(トイレ付きの電車です)と思ってましたが、それきり電車が動き出しても男性は帰ってきません。
次の駅に着いて奥さんの隣の席に人が座ろうとしました。あ、来ます、とか言って断るのかと思いきや、奥さん(らしき人)は知らん顔をしています。
息子(らしき人)と何やら楽しそうに話しこんでいます。
次の駅に着きました。二人は席を立って降りていきます。
私は年配の男性とホームで合流するのかと思い、気を付けて見てましたが、二人はまったく周囲に目もくれず歩いて行ってしまったのです。

あの男性はどこへいったのでしょう。
二人は夫婦だったのでしょうか。

小さな紙袋にはペットボトルのお茶が入ってました。奥さんは、男性が消えたあと、普通にそれを取り出して飲んでいました。


そんなに不思議ではないのですが、駅と駅の間で男性が立っていったのはどうしてなのか、しばらく考えてしまったものです。
ついさっき、恩田さんのこの言葉を読むまではすっかり忘れていた小さな小さな出来事でした。

皆さんも、こんなちょっとした不思議な出来事を見たり聞いたりしたことはありませんか?